本「GRIT やり抜く力」引用/”天才”だと決めつけてしまう理由
今日は12月10日。
現在午前10時59分。今のところ、地震は起きていない。
前投稿に引き続いて、本「GRIT やり抜く力」
(アンジェラ・ダックワース著/ダイヤモンド社)から引用。
誰かが新聞に載るほどの偉業を成し遂げると、
世間はたちまちその人を「並外れた才能の持ち主」として
あがめてしまう。
しかし、才能を過大評価すると、
ほかのすべてを過小評価してしまうことになる。(中略)
私自身も、気がつけば同じようなことをしている。
あっと驚くようなすごい人を見るとつい「天才だ!」と
思ってしまうのだ。
まったく情けない。
その裏にどれほどの努力があるか、わかっているはずなのに。
私たちの頭のなかは、いったいどうなっているのだろうか?
「才能」に対する無意識の先入観は、どうしてこうも根深いのだろう?
(58~59p)
ハミルトン・カレッジの社会学者、ダニエル・F・チャンブリスは、
論文でこう述べている。
「最高のパフォーマンスは、無数の小さなスキルや行動を
積み重ねた結果として生み出される。
それは本人が意識的に習得する数々のスキルや、
試行錯誤するなかで見出した方法などが、周到な訓練によって
叩き込まれ、習慣となり、やがて一体化したものなのだ。
やっていることの一つひとつには、特別なことや超人的なところは
なにもないが、それらを継続的に正しく積み重ねていくことで
生じる相乗効果によって、卓越したレベルに到達できる」
(60p)
チャンブリスは言う。
「私たちは優秀なアスリートを見ると、
すぐに才能があると決めつけてしまう。
それこそが一流のアスリートの証しだとでもいうように」
そして一流のアスリートには
「生まれつき特別な才能が、まるで体の一部のように
備わっているのに対し、ほとんどの人間はそれらを享受できず、
肉体的にも、遺伝的にも、心理的にも、生理学的にも、
決定的なちがいがあると思っている。
才能がある人にはあるが、ない人にはない。
生まれながらのアスリートもいれば、そうでない人もいる。
私たちはそう信じている」
まさにそのとおりだと思う。
アスリートであれ、音楽家であれ、わけのわからないほど
素晴らしいパフォーマンスを目にすると、
私たちはお手上げだと言わんばかりに、
「あれは天性の才能だよ!教わってできるようなことじゃない」
などと言ってしまう。言い換えれば、常人の域をはるかに超えた
パフォーマンスに圧倒され、それがすさまじい訓練と経験の
積み重ねの成果であることが想像できないと、
なにも考えずにただ「生まれつき才能がある人」と
決めつけてしまうのだ。 (61~62p)
でもなぜだろう?私たちはいったいなぜ、
(水泳選手の)スピッツの超人技は努力のたまものではないと
思いたがるのだろうか?ニーチェはこう言っている。
「我々の虚栄心や利己心によって、天才崇拝にはますます
拍車がかかる。天才というのは神がかった存在だと思えば、
それにくらべて引け目を感じる必要がないからだ。
『あの人は超人的だ』というのは、
『張り合ってもしかたない』という意味なのだ」
言い換えれば、「天賦(てんぷ)の才を持つ人」を神格化して
しまったほうがラクなのだ。
そうすれば、やすやすと現状に甘んじていられる。
(中略)
では実際、偉業はどのように達成されるのだろうか?
ニーチェが到達した結論もチャンブリスと同じだった。
偉業を達成する人びとは、
「一つのことをひたすら考え続け、ありとあらゆるものを活用し、
自分の内面に観察の目を向けるだけでなく、
ほかの人びとの精神生活も熱心に観察し、いたるところに
見習うべき人物を見つけては奮起し、あくなき探究心をもって
ありとあらゆる手段を利用する」
では、才能についてはどうか?
ニーチェは偉業を達成した人びとのことを、
なによりも「職人」と考えるべきだと訴えている。
「天才だの、天賦の才だのと言って片付けないでほしい!
才能に恵まれていない人びとも、偉大な達人になるのだから。
達人たちは努力によって偉業を成し遂げ、(世間の言う)
”天才”になったのだ。
・・・・・・・彼らはみな、腕の立つ熟練工のごとき真剣さで、
まずは一つひとつの部品を正確に組み立てる技術を身につける。
そのうえでようやく思い切って、最後には壮大なものを創りあげる。
それ以前の段階をじっくり時間をかけるのは、
輝かしい完成の瞬間よりも、むしろ細部をおろそかにせず
丁寧に仕事をすることに喜びを覚えるからだ」
(66~67p)
「あの人は天才だ」「もともと才能があるからできたこと」
そう言ってしまうことはよくあること。
実際に才能はあると思う。
でもそう言ってしまう背景には、どのような心理が働くのか。
そのことの引用をしてみました。
ニーチェの言葉
「細部をおろそかにせず丁寧に仕事をすることに喜びを覚える」
は大事だよなあ。
(つづく)
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