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2015年8月27日 (木)

映画「肉弾」の絶妙な会話シーン

 

今日は8月27日。

  

毎週「ザ・テレビジョン」(または「TVガイド」)を見て、

1週間分の録画したい番組のチェックをしています。

その時に目が留まったのが映画「肉弾」(1968年)

8月17日にNHKBSプレミアムでの放映でした。

「ザ・テレビジョン」には映画についての説明は全くなし。

しかしこの映画タイトルが気になって調べました。

  

「日本のいちばん長い日」の岡本喜八が脚本・監督を担当した

もう一つの“日本のいちばん長い日”。

Movie Walker 「肉弾」

  

この説明で録画予約しました。

  

昨日少し見始めたら、一気に見てしまいました。

「日本のいちばん長い日」とは違って、

歴史上には出てこないであろう特攻兵の

1945年の夏の2週間ほどを描いた映画でした。

(最後に20年後の1968年になります)

白黒で見づらい映画ですが、

そんなことがあまり支障にならずに見ることができました。

  

主人公の「あいつ」(寺田農)と

古本屋のオジイサン(笠智衆)との会話シーンが絶妙でした。

  

そのシーンを聞き書きしてみたいです。

  

戦車の下に爆弾を抱えてつっこむ特攻作戦を命令された「あいつ」

1日の自由時間を有効に使おうと、街に出ます。

雨降り。「あいつ」が道を歩いていると、道端に穴。

その穴の入り口には「尚文堂」という看板。

「あいつ」はその穴の中に入っていきます。

雨が階段を伝ってどんどん入っていくそんな地下に

古本屋がありました。

  

店頭には少ない雑誌。

(あいつ)「これだけですか?」

(オジイサン)「それだけだよ、兵隊さん」

(あ)「もっと厚いのないですか?活字がいっぱい詰まっていて、

   枕にでもなりそうなの」

(オ)「あるよ、兵隊さん」

(あ)「ありますか?見せてください」

(オ)「電話帳だよ、兵隊さん」

(あ)「電話帳はダメだなあ。おもしろくないっすよお。

   もっとおもしろいの・・・・・やあ、あまりおもしろいのはダメだなあ」

   「1日、2日で読んでしまっちゃダメだあ。適当に面白くって、

   適当につまんなくて、何日も何日ももつのがいい。」

   「僕自身、何日もつかわからない」

(オ)「あるよ、聖書はどうかね、兵隊さん」

(あ)「聖書って・・・・・・・・・・・・・バイブル?」

(オ)「そうだよ、バイブル。あれなら読みづらくて、はかがいかない※。

   そのわりにおもしろい」

(あ)「それ、どこにありますか?」

(オ)あごでさし示めしながら「うっ」

(あ)「あ、ハハハ、これがいい、枕になる」「いくらです?これ」

(オ)「タダだよ、兵隊さん」

(あ)「タダ~!」

(オ)「そうタダ。その代わりと言っちゃ、あれだが、

   兵隊さんに一つだけ頼みがある。」

(あ)「何ですか?いいですよ」

(オ)「私には両手がない」

(あ)「え!?」

(オ)「B29の野郎に持って行かれてしまった。

   肩の付け根から根こそぎにね」

   「いつもはバアサンにやってもらうのだが、

   あいにくと買い出しに行っていてね、

   さっきから誰か来ないかと待っていたところだ」

(あ)「わかった、小便でしょう」

(オ)「当たったあ、アハハハハハハハ」↓

Rimg3421

(あ)「ハハハハハハア 当たっちゃったあ ハハハハハハ」

Rimg3420

(あ)「こ、こりゃいいや、おれ久しぶりに笑っちゃった」

(オ)「私もだ。しかし、笑ったら急に忙しくなったよ、兵隊さん」

(あ)「そうかい、そりゃあいけね」

2人は笑いながらトイレに向かう。

  

このシーンです。

アップで撮られた満面の笑顔。

小便と言うささいな出来事で笑いあい、この後トイレで用を済ませます。

オジイサンの幸せな顔。

小便することがこんなに楽しいことなのかと思ってしまいます。

映画の中盤で自殺未遂をした女性に

「あいつ」は次のように語っています。

  

「死ぬことはないですよ。生きてりゃあ、ほんのちょっとしたこと、

たとえば小便することだって楽しいですよ」

  

前掲のシーンがあるために、実感ある言葉になっています。

「生きる」意義が込められた言葉でした。

こんな感じに、滑稽な映像が多いのですが、

その中に反戦の気持ちが込められています。

「日本でいちばん長い日」の硬派な映画と対称的な作品だと思いました。

同じ監督の作品なんですね。こういうの楽しいなあ。

「日本でいちばん長い日」は前年1967年の作品です。

映画「肉弾」・・・お薦めです。

  

  

※「はかがいかない」

 「はか」は「はかどる」の「はか(捗)」です。

 したがって「はかどらない」「スムーズにいかない」ということでしょう。

  

最後に主な出演者を並べます。

寺田農(1942~ )

大谷直子(1950~ )

天本英世(1926~2003)

今福将雄(1921~2015!) 5月27日のことでした。

笠智衆(1904~1993)

北林谷栄(1911~2010)

春川ますみ(1935~ )

小沢昭一(1929~2012)

菅井きん(1926~ )

頭師佳孝(1955~ )

田中邦衛(1932~ )

中谷一郎(1930~2004)

高橋悦史(1935~1996)

仲代達也(1932~ )

  

懐かしい俳優さんをたくさん見ることができました。

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