火天の城8/作者の想像力
安土城はできてから、3年で天守が焼失。
あまりに早く燃えてしまったためか、その姿は正確に伝える絵がなくて、
いったいどんな姿をした城だったのかはいまだに研究が続いています。
信長の城とはいえ、姿がわからない城への私の興味はあまり高くなかったです。
しかし、その安土城の映画が作られた!は驚き。
そして安土城建設の小説がある!
研究でまだ姿が正確にわかっていないのに、
小説で、とても細かく、リアルに城がつくられていく過程が描かれているのを読んで、
人間の想像力に万歳! うれしくなりました。
想像力がこんな場面も作りました。
安土城が作られる場所近くの寺に、足軽を引き連れた武将がやってきました。
寺の和尚は、武将に尋ねます。
(和尚)「いかがなさった。足軽など連れて・・・」
(武将)「よんどころない仕儀(しぎ)となった。早々にここを立ち退いていただきたい」
(和尚)「とおっしゃると・・・」
(武将)「御屋形様の命により、寺を撤収させていただく」(42p)
寺を解体して、その材を安土城建設のために使わせてもらうという無理難題でした。
武将はすぐに退去することを和尚に言います。
武将は、和尚に対して「お気の毒とは思うが」「わがままを言わず、退去なされよ」と言って説得します。
しかし、頑として退去を拒む和尚。
気に入らぬなら、私を切り捨てよと和尚。
それならばと刀をふりあげた武将。
テレビの時代劇ならここで風車が飛んできたりして、
和尚は殺されずにすみます。
そうなることを期待して読んでいたのですが、
風車は飛んでこず、和尚は殺されてしまいます。
その直後、主人公の棟梁岡部又右衛門が通りがかります。
岡部は死体に合掌。
切り殺した武将を非難することなく、こう思います。
「(前略)城はな、人の血を吸って建つのだと、あらためて思い知ったでや。
合戦のための城じゃもの、どのみち血は避けられぬ。
血であがなった領地田畑があればこそ、そこに城が建つ。
ついそれを忘れておったが、久しぶりに人が死んでゆくのを見て思い出したとも。
われら城大工の仕事は、武士(もののふ)どもが死ぬ場所をつくることであったわ。」(47p)
今とは違う、戦国時代の時代相がわかるエピソードでした。厳しい時代です。
作者の想像力の産物の中で、気持ちよく泳がせてもらいました。
次は「雷神の筒」を注文。同じ作者の本です。
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今度は火縄銃です。
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