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2023年11月15日 (水)

本「ご隠居さん」② へっつい幽霊 噺家で違う 木や石 誂(あつらえ) 

  

今日は令和5年11月15日。

  

前記事に引き続き、

「ご隠居さん」(野口卓著/文春文庫)

より引用していきます。

  

問われては、例えばこんな噺(はなし)がと前置きして、「へっつい

幽霊」の粗筋を話した。

博奕好きの左官の留が二百四、五十両も勝ったので、二百両を竈(へっ

つい)の角に塗りこめた。ところが、手料理のトラフグに中毒(あた)

って頓死したのである。竈には据え付け型と持ち運べるのがあるが、こ

れは後者だろう。

持ち主が死んだので、竈は古道具屋に引き取られた。それを買った客は、

金に未練のある留が幽霊になって出るので、怖くて夜中に古道具屋に返

しに来る。

売り値の半額で引き取るので儲かるが、何度も重なれば店の評判が悪く

なる。古道具屋は無料にして、そのかわり返品不可との条件を付けた。

こんないい品が無料だとは、と喜んで熊がもらった。

幽霊が出たが、肝っ玉の据わった熊は動ぜずに話を聞いてやり、二百両

を取り出して折半した。ところが博奕好きの両人、百両全額を賭けて大

勝負に出る。

負けたの幽霊がもう一度勝負を挑むが、お金がないだろうと言われ、

「あっしも幽霊だ、足は出さない」

(99p)

  

この本では落語がたくさん出てきます。

主人公のご隠居さんが、若い時に言葉を覚えるのには、

落語がいいと知って、寄席に通って聞いたことから、

落語が出てきます。

【へっつい幽霊】立川談志

Img_2897

ここにリンクは貼っておきました。

近日中に、立川談志さんの「へっつい幽霊」を楽しんでみたい。

これも縁です

    

「と、これだけの話なんですが、ちっとも怖くないでしょう」

「幽霊に足がないのを、お金がないのに掛けたのですね」

「若旦那が登場するのとしないのとか、金が二百両だったり三百両だ

ったり、噺家によって多少ちがって語られますが」

「あら、落語って、なにもかも決まっているのではないのですか」

「だったらつまらない。大筋はおなじでも、噺家がどこをおもしろが

っているか、どこを聞いてもらいたいかによって、全部ちがうのです

よ。ですからおなじ噺をいろんな噺家で聴いて楽しめるし、どう語る

かを聴き比べるおもしろさもあるのです。場所や人の名前も、おなじ

とはかぎらないですからね」

(100p)

  

なるほどね。

そうは思っていましたが、噺家によって、

同じネタでも、いろいろ変わるのは、こういう理由なのですね。

この本で落語の勉強ができます。

  

「今、わたしも気付きましたが、梟助さんにだと、とてもすなおな気持

で話すことができるのですね」

「ここまで年を取ると、木や石に話し掛けるように、気楽に話せるのか

もしれません」

(107〜108p)

  

この受け応えはいいなと思いました。

私も年を取ってきたので、このセリフが言えるかな。

  

  

いや、それ以前に鏡そのものが、めったにお目に掛かることのできぬ

極上の「誂(あつらえ)」であった。

お得意さんから紹介され、「鏡磨ぎなら梟助さん」との指名で、ぜひ

にと但馬屋からたのまれたのである。

初めて磨ぎに訪れたとき出された鏡が誂で、梟助は思わず襟を正した。

誂は註文に応じて誂えた一点ものという意味だ。鏡面は真っ平だが、

裏面に文様が彫られている。文様の盛りあがりは、雌型(めがた)で

は窪みとなっていた。粘土に箆(へら)で直接に描いていくのだが、

これに多大な時間が取られる。

完成後、この雌型に溶かした純良な白銅を注いで鋳造するのだ。雌型

を壊して鏡を取り出し、鏡面を磨いて作るので、一点かぎりとなる。

これが誂だ。

完成した鏡を粘土の上に置き、足で強く踏みつけて陰刻鋳型をいくつ

も作り、乾かして銅を流しこむと無数の複製が作れる。 鏡が女性の化

粧道具として必需品となったため、安価に大量に生産しなければなら

なくなったこともあった。

「誂」から複製したのが「似(にたり)」で、ほぼ誂に似ているとの

意味である。さらに複製すれば「粉(まがえ)」、次が「本間(ほん

ま)」、「又(また)」、「並(なみ)」、「彦(ひこ)」と七段階

に複製されるが、次第に粗悪になるのはやむを得ない。

(111〜112p)

  

誂という言葉が印象に残りました。

「誂える」とはどういう意味だったかな。

調べました。

「自分の思いどおりに作らせる。注文して作らせる。」

例:「洋服を—・える」「寿司を—・える」

goo辞書 誂える

やっぱり今でも一点ものの意味が残っていますね。  

  

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