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2022年12月30日 (金)

「無人島のふたり」② 今だけを見つめる技が習得できないものか

     

今日は令和4年12月30日。

  

前記事に引き続き、

「無人島のふたり 120日以上生きなくっちゃ日記」

(山本文緒著/新潮社)より引用していきます。

  

緩和ケアの先生に、山本文緒さんが、

初めて話をした時の文章です。

  

私の長い話を、AクリニックのO先生は遮らずに聞いて下さった。

そして1時間余り、今後のことなどをあれこれと相談させて頂いた。

私は家族以外の方とこんなに病気のことをフラットに話せたのは初

めてだったし、夫も自分の気持ちを口に出したのは初めてだったと

思う。

よかった。本当によかった。私はクリニックの方々に助けてもらう

だけではなくて、私の経験が、彼らや彼らがこれから出会う患者さ

んの役に少しでも立ちますようにと思った。私、うまく死ねそうで

す。

(18p)

  

緩和ケアの効果は大きいんだなと思いました。

「私、うまく死ねそうです」という気持ちになったのがすごい。

私にとって、緩和ケアは未知のことですが、

こんなところなんだなと想像させてくれます。

  

私の膵臓がんはスティーブ・ジョブズがかかったような特殊なもの

ではなくて、ごく平凡なものだった。なので標準治療も複雑なもの

ではなくごくシンプル。

セカンドオピニオンの医師はすごく頭の切れそうな方だった。説明

が上手で感じが良く、我々の反応をよく見ていた。そして私本人が

まだ迷っているのを察して、道筋を見つけて、選択肢を明確にして

くれ、押しつけがましくない誘導をしてくれた。

そしてB医療センターの先生と違った点は、余命の時間だった。そ

の先生は私の予後を4カ月、化学療法を行って効いたとしても9カ

月と言った。

(27p)

  

スティーブ・ジョブズも膵臓がんだったのですね。

もうだいぶ昔の「ためしてガッテン」で、もっとも厄介ながんが、

膵臓がんであると紹介された時から、私にとって膵臓がんは、

耳にしただけでも、ゾクッときます。

   

2021年6月1日に、こうして山本さんは、

余命4ヶ月を宣言されます。

   

帰りの新幹線のホームで、それまであまり言われたことにピンとき

ていなかったのが、「4カ月ってたったの120日じゃん」と唐突

に実感が湧いて涙が止まらなくなった。(中略)

しかし泣きながらも、『120日後に死ぬフミオ』って本を出した

らパクリとか言われるかなとも考えた。

帰宅してシャワーを浴びる気もせず、パジャマに着替えてベットに

入った。もうすぐ死ぬとわかっていても、読みかけの本の続きが気

になって読んだ。

金原ひとみさんの『アンソーシャル ディスタンス』、死ぬことを

忘れるほど面白い。

(28p)

   

「4カ月」よりも「120日」とすると

カウントダウンが始まってしまう感覚になるのでしょうか。

1か月は漠然と長いけど、1日は短い。

そんな短い1日が120回で死を迎える。

涙を流すことに共感できたつもりです。

 

「100日後に死ぬワニ」は本で読みました。

ここでも道草 「100日後に死ぬワニ」を読みました(2021年7月11日投稿)

そのパクリと言うわけですね。

大きな違いは、本人が120日後に死ぬことを知っていることです。

その状況に、私は耐えられるだろうか。

 

死ぬとわかっていても、読みかけの本の続きが気になった山本さん。

読書で味わえる没入感は、差し迫ってくる死を横に置いておく効果は

あるのかもしれません。

この日記には、この後も、読書が出てきます。

私も読書に助けられたいです。

  

  

何も考えたくない。

過去のことも未来のことにも目を向けず、昨日今日明日くらいのこと

しか考えなければだいぶ楽になれるのにと思いつつ、気が付くと過去

の楽しかったことや、それを失う未来のことで頭がいっぱいになって

苦しくなっている。

今だけを見つめるという技は、宗教を極めた高僧のような人にしか出

来ないことなのかもしれないと思う。あとすごい職人さんとかは無意

識にできそう。

(32p)

 

6月4日の日記です。

「それを失う未来のこと」に考えがいかないようにできたら、

楽でしょうね。山本さんの考えに共感します。

今だけを見つめる技。習得できないものか。

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