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2022年12月31日

2022年12月31日 (土)

「無人島のふたり」④ 承認欲求万歳ですよ

   

今日は令和4年12月31日。

  

前記事に引き続き、

「無人島のふたり 120日以上生きなくっちゃ日記」

(山本文緒著/新潮社)より引用していきます。

   

2021年10月13日に亡くなった山本文緒さんの日記です。

   

そして思うのは、この文章のこと。

私はこんな日記を書く意味があるんだろうか、とふと思う。

こんな、余命4カ月でもできる治療もないという救いのないテキス

トを誰も読みたくないのではないだろうか。

これ、『120日後に死ぬフミオ』のタイトルで、ツイッターやブ

ログにリアルタイムで更新したりするほうがバズったのではないか。

でもそれは望んでいることからはずいぶん遠い。そんなことだから

作家としてイマイチなのかもしれない。

だったら何も書き残したりせず、潔くこの世を去ればいいのに、ノ

ートにボールペンでちまちま書いてしまうあたりが何というか承認

欲求を捨てきれない小者感がある。

せめてこれを書くことをお別れの挨拶として許してください。

(38~39p)

  

人間がもつ承認欲求はすごいエネルギーになると思います。

余命4カ月と宣告されても、日記を生産するエネルギー。

それを小者感と謙遜しているけど、そんなことはないです。

承認欲求万歳です。

私は、死の直前までこのブログを書くと思います。

それは、こんな人間が存在したんだよと、

証を残したいからだと想像します。

これは承認欲求です。

人間の、死の直前でも、最後に振り絞るエネルギーの源は、

承認欲求なのではと、この文章を読んで思いました。

  

医療用ウィッグは、ネットで検索していろいろ迷った末に、大手の

かつらメーカーで高いものを作った。

ウィッグそのものよりも、大手で作ると店に個室の美容室がついて

いて、抗がん剤で抜けた髪について研修を受けている美容師さんに

髪を整えてもらうのが何度か無料で出来ていいと思ったからだ。

(中略)

病気の時は、お金を払うから詳しい人に優しくされたい、というの

が本音だ。

その大手のお店では、ウィッグを作ったとき髪のことだけではなく

て、抗がん剤の症状の対処法なんかもいろいろ教えてくださり、と

ても嬉しかった。

(41~42p)

  

「お金は払うから詳しい人にやさしくされたい」

という本音が知れてよかったです。

そう思うのですね。

  

Sさんは、おそらく新潮社の山本さんの担当編集者。

  

この日記を手書きで書いていることをSさんに打ち明けた。

活字にしてほしい気持ちがある反面、こんなの誰が読むのだろう、

誰かが読んで面白いって思う?と自分でもまだ懐疑的で、何だかあ

やふやなことを言ってしまった。(中略)

Sさんとは30分くらいのつもりが楽しくなって2時間くらいおし

ゃべりをしてしまった。

6月の終わりに食べるとお祓いになると言う「水無月」という和菓

子を一緒に食べた。

また会いましょう。夏のうちに会いましょうね、絶対に会いましょ

うと言って別れた。

駅で別れた途端に目の前が歪んだ。

(63~64p)

  

6月29日の日記です。

余命は1カ月過ぎて、残り3カ月。

夏の間に絶対に会いたいと思う気持ちは共感できます。

秋には命がどうなっているのかわからないわけだから。

 

6月30日の日記です。

 

余命を宣告された時、もうこれで勉強のための読書をしないでいい

のだと思ったことは事実で、実際に家にあった未読本をたくさん手

放した。

未来のための読書がなくなったらもう何も読みたいものはないのか

もと思ったけれど、私の枕元には未読本が積んであるコーナーがあ

って毎晩その中からその日の気分に合わせて本を選んでいる。未来

はなくとも本も漫画も面白い。とても不思議だ。  

(65~66p)  

  

「読む」という行為は、中毒性があると思います。

活字中毒と言う言葉を、ずっと以前に聞いて、

頭にこびりついています。

椎名誠さんがそうでした。

文字を見たら読まざるを得ない。

文字がないと探してしまう。

日本語がわからない人が見たら、

何が書いてあるか全くわからない文章を読んで、

頭で想像することができるのは、きっと面白い。

私も、活字中毒になるように心がけ、

死の直前でも、本やマンガを楽しめるようになりたい。

「無人島のふたり」③ アルカイック・スマイルなんて無理

    

今日は令和4年12月31日。

  

前記事に引き続き、

「無人島のふたり 120日以上生きなくっちゃ日記」

(山本文緒著/新潮社)より引用していきます。

   

2021年10月13日に亡くなった山本文緒さんの日記です。

  

寝ても寝ても眠い。

お昼前に一度起きたが、倦怠感半端なく午後もまた寝る。

夜になって少しマシになり、起き上がって夕食。

食後、夫と録画してあった「アメトーーク!」を見る。

アッハッハと笑って全部見終わったら気持ちが無防備になったのか

「あー、体だるい。これいつ治るんだろう」と思ってしまい、「あ、

そういえばもう治らないんだった。悪くなる一方で終わるんだった」

と気が付いてだーっと泣いてしまった。

(33p)6月6日の日記です。

  

私はなぜこの本を読んだのか。

いつかは自分の身に起こると考えて、

疑似体験したいと思っているところがまずあります。

あるいは、達者な作家さんならば、

死を達観して、うまく死を納めているかなと期待したところも

あるかもしれません。

でも、死を達観するなどできないことです。

山本さんも何度も泣いています。

死と対面した時には、たくさんの涙が必要なようです。

ふだんの生活で涙はぐっと我慢しよう。

死に直面した時に、しっかり泣いて、心を落ち着かせたいです。

  

昨晩は「アメトーーク!」の特番があり、

うちの娘はお笑いが大好きなので、しっかり見ていました。

家中に、娘の笑い声が響いていました。

私もつられていっとき見て、しっかり笑いました。

お笑い番組は、やっぱり必要ですよね。

笑わされることは、大事なことです。

死をも忘れさせてくれる笑いの力、すごいです。

私が昨晩特に笑ったのが「運動神経が悪い芸人」です。

  

6月6日の日記はまだ続きます。

  

どんないい人生でも悪い人生でも、人は等しく死ぬ。それが早いか遅

いかだけで一人残らず誰にでも終わりがやってくる。

その終わりを、私は過不足ない医療を受け、人に恵まれ、お金の心配

もなく迎えることができる。

だから今は安らかな気持ちだ・・・・、余命を宣告されたら、そうい

う気持ちになるのかと思っていたが、それは違った。

死にたくない、なんでもするから助けてください、とジタバタすると

いうのとは違うけれど、何もかも達観したアルカイックスマイルなん

て浮かべることはできない。

そんな簡単に割り切れるかボケ!と神様に言いたい気持ちがする。

(34p)

  

「アルカイックスマイル」とは?

※コトバンク

 

ギリシャのアルカイック彫刻に見られる、口元に微笑みを浮かべた表情。

  

なるほど。アルカイック・スマイルだったんだ。

  

死は達観できないのです。

みんな死ぬんだからなんて考えられません。

みんなはともかく、自分の死は大問題なのです。

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