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2022年9月 2日 (金)

「定本納棺夫日記」③ 人の死へのイメージ

     

今日は令和4年9月2日。

   

前記事の続きで、

「定本納棺夫日記」(青木新門著/桂書房)より。

  

前記事で書いた「機縁」が心に残っています。

毎日、何かと出合っています。

その出合いを大切にして、

自分にとってプラスのことができるかどうか。

それには、このブログとか、日記帳が大事になると思うのです。

例えば、この本との出合いを、よりよいものにするために、

読みっぱなしではなく、こうやってブログに書き留める。

時間はかかるけど、その行為は有意義だと信じたいです。

  

引用していきます。

   

人の死へのイメージは強固である。それは死後のイメージにも連動

している。

最近中国の農村で、当局が土葬を禁止し、火葬に切り替えるとお触

れを出したところ、火葬されると天国に行けなくなると、老人が次

々に自殺したというニュース(AP電)が新聞に載っていた。ある

県で実施15日前に来月から火葬の完全実施の政令を出したところ、

これを知った老人の中には、大量の睡眠薬を飲んで棺桶の中に入っ

たり、川に身を投げたり、服毒や絶食をしたりして、15日間に

67人の自殺者が出たと報じてあった。

死後の死体の処理方法まで思い悩み、死を賭してでも己の望む死に

方に固執する人間の自我に、愕然とさせられる。

(52p)

  

先ごろ亡くなった島田陽子さんは、宇宙葬を選択しました。

自分が宇宙葬だと、地球から未知の空間に行ってしまうので、

怖いなあと思ってしまいました。

死んだ後のことなのに、そんなイメージを持ってしまいます。

中国の老人の行いに共感するところが、自分にはあります。

「葬」という漢字は、上下に草を意味する部分があります。

 

漢字ができた頃には、死者を葬る(ホフル)ということは、草の中

へ放って(ホフッテ)きただけだったのかもしれない。

(52p)

  

案外、死体はぞんざいに扱われていたのかもしれません。

それはそれで、済んでいたのでしょう。

  

美しい死のイメージもまた同じである。

美しい死のイメージと言っても、その人の世界観や美意識などで一

人一人違ってくる。その人を取り巻く風土や社会によっても違って

くる。だから普遍的な美しい死に方など、こうあるべきなどと簡単

に言えるものではない。

しかし、その時代、その社会で、美しい死の概念が一つの傾向を示

すことがある。

たとえば「武士道といふは、死ぬことと見つけたり」という『葉隠』

の思想などが賛美される時代にあっては、おめおめ生きているより、

いさぎよく死を選ぶ方が善であり美であるとし、その死に方も切腹

や神風特攻隊に象徴されるような壮絶な死に方が最も美しい死に方

とされたこともある。

ところが敗戦による終戦とともに、一つの思想体系が崩壊すると全

てが逆転し、とにかく生きることが善であり、死はいかなる形であ

れ悪とされてゆく。

(53p)

  

ガンで死にたくない、長生きしたいと常々思っている私は、

今の雰囲気に飲まれているのかもしれません。

古谷一行さんが、78歳で亡くなったと知りました。

まだ若い。私は78歳では死にたくない。

そんなことを思うのは、自己中心的な考え方なのでしょう。

古谷さんは、きっと十分生きた人生だと思っているかも。

  

三島由紀夫の自殺に関する記述が印象に残りました。

 

生に絶対の価値を置く社会風潮の中で、昭和45年11月25日、

陸上自衛隊東部方面総監室で割腹自殺した三島由紀夫の死に方は、

当時の人々に大きな衝撃を与えた。

三島は自作の『憂国』を自ら解説して

「私の癒しがたい観念のなかでは、老年は永遠に醜く、青春は永遠

に美しい。老年の知恵は永遠に迷妄であり、青年の行動は永遠に透

徹している。だから、生きていればいるほど悪くなるのであり、人

生はつまり真っ逆さまの頽落(たいらく)である。(中略)」

と言っている。そして作品『鏡子の鏡』の中では

「もし人間の肉体が芸術作品だと仮定しても、時間に蝕まれ衰退し

てゆく傾向を阻止することはできないであろう。そこでもこの仮定

が成り立つとすれば、最上の条件の時における自殺だけが、それを

衰退から救うであろう」

と言って、作中の若者に情死をとげさせている。

三島由紀夫にとっての美しい死に方は、自殺しかなかったといえる。

(53~54p)

  

三島由紀夫の割腹自殺は、知ってはいたけど、

三島由紀夫の考え方を初めて知りました。

美しい死に方のこだわりがあったのですね。

自殺者の中には、このように考えている人は他にもいるのでしょうか。

私は、絶対に思い至らない考え方です。

  

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