子熊をあの世に送り出すイオマンテ
今日は令和4年8月23日。
前記事のつづき。
「知床・残された原始」(水越武・小野有五著/岩波書店)
に書かれた、ヒグマの記述を引用します。
シレトコの地形的な象徴が高い海食崖や火山であるとすれば、生き
物でシレトコを象徴するのは、なんといってもヒグマであろう。ア
イヌにとっては最高のカムイ、山のカムイ(キムンカムイ)であっ
た。この写真集にも、キムンカムイが多くのすばらしい写真で登場
する。いまの日本列島で、ヒグマがもっとも原始のままの生き方を
保っているのがシレトコだからである。生態系の頂点にたつこれら
の巨大なカムイたちが生き続けるためには、それを支える豊かすぎ
るほどの自然が必要なのだ。
漫画「ゴールデンカムイ」でも、何度も繰り返しヒグマが登場し、
キムンカムイであることが書いてありました。
そことつながります。
ヒグマの赤ちゃんは、母熊が冬眠中に生まれる。眠っているのにな
ぜお産ができるのだろうとふしぎにもなるが、動物たちの冬眠は無
駄なエネルギーを消耗しないための仮眠であり、雪の下の安全な部
屋(冬眠穴)でのお産は、もっとも合理的な繁殖のすがたであるか
もしれない。冬眠から覚めて、外の世界に子熊たちを連れ出し授乳
する母熊(42頁)、フキの葉も大きくなり、花々が咲き出すなか
でじゃれあう子熊(45頁)、樹の上で眠る子熊(44頁)などの
写真は微笑ましいが、エゾシカの肉をむさぼるヒグマの写真(43
頁)は強烈である。
冬眠中にお産をするのは初めて知りました。
先輩先生は、写真集をサークルに持参していました。
パラパラと見ましたが、今一度文中にあるページの写真を
じっくり見たいものです。
また持ってきてくださいとお願いしようかな。
アイヌは、母熊が冬眠しているときに冬眠穴を見つけ、トリカブト
を塗った矢でこれを獲った。中には生まれたばかりの赤ちゃん熊が
いる。それを殺さずにコタンへ連れて帰り、1~2年、まるで家族
の一員のようにして大事に育て、飼うのが危険になったころ、特別
の儀式をして子熊をカムイの国に送り返した。この儀式がイオマン
テである。アイヌ語では、イ(それ)オマンテ(送る)という意味
だ。カムイのように尊いものの名はうかつに口にはできないので、
あえてイ(それ)というのである。
子熊を殺すのは残酷だ、というので、イオマンテは道庁から長いこ
と禁止されていた。だが、アイヌだって、かわいがってきた子熊を
殺すのはつらいのである。アイヌの世界観では、ヒグマもキツネも、
カムイ(神)が毛皮を着てこの世(アイヌモシリ)に現れたものに
すぎない。だから精一杯もてなし、たくさんのお土産をもたせて、
あの世(カムイモシリ)へお送りするのである。だから準備に何か
月も費やし、心からの尊敬の念をもって動物を殺す人たちと、知ら
ん顔して牛や豚を殺して食べている私たちと、どちらが残酷であろ
うか。
イオマンテは耳に覚えがある言葉です。
子熊を殺してあの世に送る儀式のことだったのですね。
「ゴールデンカムイ」を読んでいたら、
今に出てきそうなことです。
今回の「道草」に紹介された、知床、アイヌ民族、ヒグマの紹介、興味深く読みました。アイヌの人や水越武さん、阿部博さんから、イオマンテの話を聞いてみたいですね。遠山
投稿: 遠山 清美 | 2022年8月27日 (土) 20:43
遠山さん、コメントをありがとうございます。
知床。まずは行ってみたいです。
ヒグマは怖いけど、山に登ってみたいです。
投稿: いっぱい道草 | 2022年8月28日 (日) 19:53