「おれは一万石 一揆の声」読破/一揆の勉強
今日は令和4年2月5日。
この本を読みました。
「おれは一万石 一揆の声」(千野隆司著/双葉文庫)
この本は、江戸時代の一揆の勉強になりました。
「頭取が誰だか、わからねえようにすればいいんだ。いくら藩や代
官所でも、村の者すべてを死罪にするわけにはいかねえんだから」
「いったいどうすれば、そんなことができるんですかね」
与助の提案に、小前の一人が問いかけた。
「車連判(くるまれんぱん)を拵(こしら)えるんだ」
「な、何ですか、それは」
「連判状は、最初に名を記した者が頭取になる。しかしそれでは、
その一番に名を書いた者が一番重い処罰を受ける」
そこで後先のない連判状を拵えるのである。頭取が誰かを分からせ
ないように、円形放射状に名を書き連ねるのだという。名主を始め
とする村方三役も小前も、対等の関係にある者として名を記すこと
になる。
それでも名主や村方三役の名があれば、領主の側はこれを頭取とみ
なす。しかし百姓たちにしてみれば、少しでも名主らの罪科を減ら
したいという願いを、そこに込めていた。
(34~35p)
教科書では「から傘連判状」となっているものです。
少しでも名主らの罪科を減らそうという願いがこもっていたのは、
なるほどと思いました。
「から傘」に書いても、処罰されるぞと思っていたので、
この文章は印象に残りました。
「筵旗(むしろばた)を、作らねばなるめえ」
これも欠かせない準備となる。一揆の主張と村の名を入れなくては
ならない。旗の役目は、村の名とその主張を明確にして、団結の証
とすることだ。素材は筵とは限らない。筵よりも布や紙の方が多く
使われた。
(61p)
本の表紙の絵には、この筵旗が描かれています。
一揆には必要なものだったのですね。
村々から、百姓が集まってくる。一軒一人ずつ、十五歳から六十歳
までの者たちである。若い者が複数いても、二人は出さない。これ
は暗黙の了解だ。一揆に出た者は、どのような懲罰が下るか分から
ない。家々で、田を守る者を確保したのである。
一揆だからといって、激情に駆られ闇雲に事をなすわけではない。
(63~64p)
これも一揆の勉強。
そして身なりは、すべての者が蓑笠を身につけた。晴雨や寒暖に関
わりなく一揆は行われるからだが、理由はそれだけではない。蓑笠
こそが、百姓の代表的な野良着だという考え方が根にあるからだ。
(65p)
これも表紙の絵では、忠実に描かれています。
一揆と打ちこわしの違いを説明した箇所もありました。
「そもそも一揆は、百姓たちが己が暮らしを守ろうとするために、
領主に請願することを目当てにした争いでござる。ゆえに百姓であ
ることを明らかにするために、鎌や鍬といった農具を得物(えもの)
にして蓑笠を身につけます」
「なるほど」
「しかし打ち壊しは、米価高騰のもととなる商人たちに対する破壊
を伴う襲撃で、請願ではありませぬ。目当ては米を奪うことでござ
います。ですから得物は農具にこだわらず、何でも手に取りまする。
蓑笠もつけませぬ。打ち壊しをなすのは、百姓とは限りませぬ」
(93p)
一揆には秩序があったことがわかった小説でした。
このシリーズを読むことで、江戸時代のことがわかってきます。
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