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2020年12月31日 (木)

「比ぶ者なき」① 「日本書紀」「聖徳太子」は藤原不比等の捏造

  

今日は令和2年12月31日。

  

令和2年、2020年も最終日です。

この本を今年中に読み切りました。

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「比ぶ者なき」

(馳星周著/中公文庫)

  

藤原不比等関連の本を2冊連続で読みました。

  

この小説の巻末には、著者の馳星周さんと

漫画家の里中満智子さんの対談が掲載されています。

そこからの引用。

 

里中:私は、聖徳太子という名前は後世の創作かもしれませんが、モ

 デルになった人物がいたと考えています。馳さんは、聖徳太子も『

 日本書紀』もすべて不比等が作ったとされていますが、どこまで信

 じていらっしゃるのですか。

馳: 僕は確信犯で、最初から大山誠一先生の説で小説を書こうと決

 めました。古代史に興味を持ってから、色々な学説があることを学

 びましたが、やはり不比等が野望のために歴史を捏造したというア

 イディアは壮大で面白かったです。

(581p)

  

大山誠一さんの説を理解するのに適した本でした。

たとえば次の文章は生々しい。

『日本書紀』を作成する者たちの会話です。

  

「そういえば、首名がよき神を見つけたと小躍りしておりました」

肩を並べてきた百枝が言った。

「よき神だと」

「はい。天照大神(あまてらすおおみかみ)というのだそうです。太

陽のごとく、あまねくこの世を照らす神です」

史はうなずいた。

「男神なのですが、これを女神に変えれば、史様の望む新たな神話の

中心に据えられるのではないかと」

「時間がかかるのう」

「この国には数多(あまた)の神がいるのですよ、史様」

(106~107p)

  

天照大神は男神だったのを女神にしたという展開。

数多いる神の中から選ばれた神だったのです。

面白い話です。

  

  

蘇我馬子が成し遂げた偉業を、皇室のそれに書き換えなければならな

い。蘇我馬子など足もとにも及ばぬような偉大な皇族がいたのだと歴

史を書き換えなければならない。

(124p)

  

問題は蘇我馬子だった。あの者の功績を天皇家のものにすげかえる。

強大な権力をふるったあの者を卑小な存在に置きかえる。

それが難航していた。蘇我馬子はあまりに巨大で生々しすぎるのだ。

(194p)

  

蘇我馬子がやったこと、たとえば仏教を広めたこと、

遣隋使を派遣したこと、隋からの使者を迎えたことなどを、

皇族の誰かがやったことにしたいと藤原不比等は考えたのです。

これが大山誠一さんの説です。

  

ちょうどいい皇族が見つかりました。

  

「厩戸王(うまやどのおう)という皇族がおりました」

田辺首名が言った。

「斑鳩寺を建てたと言われているお方だな」

「はい。皇族であり、なおかつ蘇我氏と繋がりが深い。このお方であ

れば、蘇我馬子の成し遂げてきた功績を肩代わりさせるのに都合がよ

ろしいかと存じます」

不比等はうなずいた。縁もゆかりもない者に肩代わりさせるには、蘇

我馬子は巨大すぎ、生々しすぎるのだ。皇族でありなおかつ蘇我氏で

もあった者なら首名の言うとおり、都合がよかった。

(232p)

  

厩戸王は過去から掘り出され、こうしてロックオンされました。

そして「聖徳太子」が次のようにして捏造されます。

  

「厩戸皇子でございますが、仏教、儒教、道教に精通した聖人である

とするならば、それに相応しい名前を与えてはいかがかと考えており

ます」

「よい名が浮かんだか」

「はい。聖徳太子はいかがでしょう。聖なる徳を積んだ皇太子の意に

ございます」

「聖徳太子か・・・」不比等は腕を組んだ。「よい響きではないか」

(546p)

  

   

社会科の授業で教え、テストのために中学生(小学生も)覚える「聖

徳太子」はこんな打合せで生まれた名前なのか。

それも1300年余前のことなのです。

  

天孫降臨、聖徳太子・・・すべて捏造されたものというのが大山説で

あり、それを小説化したものが本作でした。

 

どうしよう、この説はとても面白い。

信じてしまいます。

私の中では2001年のドラマ「聖徳太子」が浮かびます。

ここでも道草 ドラマ「聖徳太子」・・・ビックリの共演(2018年10月3日投稿)

このドラマでは、聖徳太子が蘇我馬子を差し置いて

偉業を成し遂げていました。

まさに藤原不比等の目論見通りの「聖徳太子」でした。

それを疑うのは面白い。

さて真実はどうなのだろう?

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