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2020年4月13日 (月)

「長期ひきこもりの現場から」⑥ ひきこもりの人たちは、毎日忙しい

今日は令和2年4月13日。

  

前記事に引き続き、

ドキュメント・長期ひきこもりの現場から

(石川清著/洋泉社)より引用します。

  

長年ひきこもりの人と対峙してきた石川さんだからこそ、

わかることがあります。

  

(前略)読者の皆さんも違和感を覚えたと思うが、ずっと引きこも

っているのに、タモツ君が「とにかく忙しくて」と言ったのはなぜ

だろうか。実は長期ひきこもっている当事者が、このように「忙し

い」、「ほかのことをやるヒマがない」と語ることはよくあること

だ。

 ひきこもっていない人からみると、あたかもひきこもり続ける人

たちは、日ごろ”何もやっていない””何も考えていない”ようにみえ

るかもしれない。だが、それは誤りであることが多い。

 長期間ひきこもっている当事者の場合、ひきこもっていても自分

の精神がなるべく歪まないように、いろいろな”ノルマ”や”作業”を

1日の時間割のなかにたくさん組み込むことがある。筋力トレーニ

ングをたっぷりこなす、筋骨隆々のひきこもりは案外珍しくないし、

学生時代の問題集や語学をひたすらやり直している人もいる。ネッ

トの掲示板を複数閲覧して、いつもきっちりコメントや返信を返す

人もいれば、ネットゲームの神様としてゲームの世界に常に君臨し

続ける人もいる。時にはそれが”強迫障害化”してしまって、日々の

自分のノルマをこなすのに忙しいから、とても働くヒマなどない、

という状況になってしまうこともある。

(143~144p)

  

  

私も、休んでいるときには筋トレをやっていました。

わかる気がします。

さらに続きます。

   

 タモツ君の場合、日々の掃除やペットの世話、新聞を読むことが

何より優先される”ノルマ”になってしまっていた。ノルマを達成し

続けることが、いつのまにか毎日の目標となってしまい、社会参加

や社会復帰ということを考えなくなってしまったのである。ノルマ

をこなし続ければ、それなりの達成感を味わえるので、一時的に落

ち着くことができるのだ。

 これはあまりに孤立的な生活を長く続けていたからこうなったの

であって、孤立状態が崩れて、日常的に第三者と交流する機会が増

えてくれば、また変化していく可能性は、もちろんある。ただ、日

常的なノルマの量があまりにも多く、時間も取られるので、なかな

かその状態から自力で脱出するのが難しくなってしまったのだ。

 そもそも、当事者自身がそのサイクルを壊したくない、壊すのが

怖い、という心理状態になって、生活に変化を起こしづらくなって

いる。もし今のサイクルを壊してしまったら、その後自分は何をや

っていいのか、わからない。根っこまで染み付いた強迫的な行動や

思考は、すべて自分自身の一部になってしまっており、切り離すこ

となど考えられない状態なのだ。

(144p)  

  

  

このような人にどう接したらいいのか?

長くなっていますが、さらに続きを引用します。

  

  

 そういった状態の当事者と接するときに必要なのは、そんないび

つかもしれない日々の”ノルマ”に支配されている当事者を決して否

定せず理解することなのかもしれない。かといって、僕も一緒に同

じことをやってしまうと、時には相手の歪んだ日常や価値観を拡大

させ、ミイラ取りがミイラになってしまうこともあるので、注意が

必要だ。

 状況によっては、正論を貫くような接し方もあるかもしれない。

ただ、その場合は、一時的に当事者が不安定になって日常生活を送

ることが困難になってしまうことも考えられる。あらかじめ丁寧で、

きちんとしたサポート体制を整えておくことが大事になる。

 つまり、ひきこもり傾向の強い人の場合、自分なりに正しいと思

ってやってきたことが突然無価値なものとして瓦解してしまうこと

はゆるされないのだ。無理すると、抑うつ状態になったり、言動が

荒れて暴力的、攻撃的になってしまうことがある。家族だけでは、

とてもそんな混乱した当事者に対処できなくなってしまう。

(144~145p) 

  

  

ひきこもりも、不登校も、

指導はとてもデリケートなものだと思います。

やるからには、その覚悟が必要です。

  

  

つづく

 

  

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