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2020年1月28日 (火)

「脳科学者の母が、認知症になる」⑨ 豊かな感情が大脳皮質を刺激する

  

今日は令和2年1月28日。

  

前記事に引き続き、

脳科学者の母が、認知症になる

(恩蔵絢子著/河出書房新社)より引用していきます。

  

アルツハイマー病が進行しても本能と感情が残ります。

 

実は、本能にこそ、感情にこそ、個性がある。

何を好きと思うか、何を嫌いと思うか、何にどう反応するかは、

生まれた瞬間から個人によって違う。

何が大事で、何が大事でないか、生まれながら持っているのが

個性で、その個性がまた、それぞれの人生の経験によって、さ

らに違うものに育っていく。

(190p)

   

人生で培ってきた感情が、「その人らしさ」となっているのです。

従って、アルツハイマー病が進行しても、

患者に「その人らしさ」は残るのです。

そんな見方を、父親にすることができるのはホッとします。

私は現在、父親の「父親らしさ」を良いものと感じています。

まだ言葉で表現できませんが、笑顔で味わえるものです。

  

  

  

著者はさらに「感情の豊かさ」について述べています。

これも書き留めたいです。 

  

感情の豊かさが我々の人生の役に立っているという証拠はある。

たとえば、たくさんの種類の感情を感じられる人ほど、挫折か

らの立ち直りが早い、と言われている。

パートナーがエイズを発症し、もう看取るしかない、という状

況に置かれた人々の感情の研究がある。このような絶望的状況

に置かれた人々は、本当に、ただ絶望しているしかないのか、

どうやってこの状況を乗り越えていくのか、ということを調べ

た研究がある。

これによると、パートナーの死まで看病した人々の99%以上

は、そんな絶望的な状況にあっても、明るい感情を持つことが

できていた。

たとえば、「こうなってしまったことには何らかの意味がある

に違いない」と状況を分析することによって、良い面を見つけ

出して、「肯定的な感情」を得た人がいた。また、「ベッドの

シーツを替えたら、とても気持ち良さそうにしてくれて嬉しか

った」と、病気の進行は止められなくても、自分のできること

を見つけて、「喜び」を見出した人もいた。また、「病院の帰

りに、ドアを開けたら夕日がとても綺麗だった」「友人が気分

転換に連れ出してくれた」と暗い気持ちで沈んでいるときに予

想外に飛び込んできた一瞬の太陽光、他者の助けに、「感動」

した人もいた。

辛い状況だからといって、辛い感情だけが生じるわけではない。

っして一番大事なことに、この絶望的状況に対して、より多様

な感情を持つことができた人ほど、パートナーが亡くなった後、

その絶望から早く立ち直ることができていた。

絶望的な状況の中で感じた小さな明るい感情が、自分を支える

力にまで育つのである。一つの出来事に、どれくらい多くの感

情を感じることができるか、それはこの世の中を生き抜く一つ

の知性である。

(197p)

  

「感情の豊かさ」が役に立った例でしたが、

著者は「豊かな感情が大脳皮質を刺激する」という章で

次のように書いています。

   

新しいことに出会うと、最も感情が動く。その場での対処を迫

られる。また、その自分の反応で事態はどうなったか、それに

対する反省も迫られる。つまり、新しいこととの出会いは、そ

の場で感情を使うだけでなく、「もっと何をすれば良かった?」

と大脳皮質に詳細な分析、反省を促すことにもなる。

また、今まで経験したことがないことに出会うことは、その場

ではすぐに言語化できないようなたくさんの感情を感じること

である。その場では「なんだこれは」と圧倒されるばかりだが、

それゆえに「なんだったのだろう」と長くその経験をを反芻し

て、なんとか理解しようとする。新しい物事との出会いで、大

脳皮質は、自分の経験したことに説明を与えようと必死になる

のである。

感情の刺激が、結局、感情のシステムと、大脳皮質の両方を発

達させることになるのだ。

(202p)  

 

これはアルツハイマー病の人でも同じだと著者は書いています。

 

今まで見たことのないものを見て、味わったことのない感情を

感じれば、まだ残っている大脳皮質が必死になってそれを分析

しようとする。そういうことで(病気の)進行が遅れるという

ことは、まだ検証されていないが、十分にあり得ることではな

いかと私は思う。

(203p)


賛成です。

天気のいい日に、車いすを押してあげて近所を散歩する。

いつかやろうと思ってやっていないことを、

やってみようと思わせてくれました。

  

  

う~ん、引用はここまでにしよう。

たくさん書き留めました。

私が現在、認知症の父親を介護している状況であったことで、

引っかかる文章がたくさんあった本でした。

父親をどう見て、どう接していけばいいか参考になりました。

また私も認知症になって本能と感情のみになった時に、

恥ずかしくないような生き方をしたいとも思いました。

キーワードは、「豊かな感情」です。

そして私にとって最強のアイテムが、このブログです。

感情が動いて大脳皮質が刺激された結果、書いています。

書きつづけたいですね。

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