対×談 福岡伸一・ブレンディみかこ 1/4
今日は令和2年1月2日。
1月1日朝日新聞朝刊の13面。
「多様性って何だ? 誰も否定されないこと 対×談」
という見出しで、生物学者の福岡伸一さん、
保育士ライターのブレンディみかこさんの対談が
載っていました。読み応えがありました。
できるだけ書き写したいです。
日本で近年よく聞く言葉に、「多様性」があります。わかった
ようなきでいても、そもそもどんな意味で、何のために必要な
のか、と問われると答えに詰まります。多様性について行力考
えてみたい。そんな狙いで、オピニオン面ではシリーズ企画を
始めます。さまざまな人種・宗教が入り混じる英国の街と、何
百万年単位で命をつないできた生物の世界。かけ離れた「多様
性」の現場を知る2人が話し合う対談から。
福岡:ブレンディさんはパンクロックに憧れて高校卒業後に
英し、低所得者が多い地域で保育士として働かされてき
たそうですね。どんなとき多様性の大切さを感じますか。
ブレンディ:多様性の対極が分断だとよく言われますが、私
は多様性と分断は隣り合わせだと思っています。英国で
も、宗教やEU(欧州連合)離脱などでは意見が真っ二
つに分かれる。でも同じ場にいさえすれば、日常的に対
立しながらも相手を理解し、落としどころを探る知恵も
身についていく。多様性の対極はむしろ、相手を知ろう
としない態度なんですね。
福岡:それは、移民の姿も知らずに排斥しようとするような
態度ということですね。
ブレンディ:そうです。英国ではEU離脱派が多い地域は住
民の多様性が乏しく、ロンドンなど移民や外国人が多い
都市部では残留派が強い。やはり自分と異なる他者のい
る場に身を置くと、身体で理解することがあるんです。
逆に、現実の姿を知らないと「生活が厳しくなるのは移
民のせいだ」と吹き込まれると、そう信じ込んでしまう。
無知が原因で恐怖心がわきあがってくるのですね。
福岡:昨夏、出版された「ぼくはイエローでホワイトで、ち
ょっとブルー」は、アイルランド人とのパートナーとの
間に生まれた息子さんが、英国の中学で多様なルーツを
持つ友達との交流や貧富、差別などに直面しながら成長
していく話です。その中で「なぜ多様性が大事なのか」
と尋ねる息子さんに、ブレンディさんは印象的な返答を
します。
ブレンディ:「うんざりするほど大変だし、めんどくさいけ
ど、多様性は無知を減らす」と息子に答えました。
福岡:うんざりするほど大変なことをして多様性を得るため
には何が必要なのか。本では「エンパシー」(empathy)
という言葉をキーワードに語っています。
ブレンディ:息子の期末試験で「エンパシーとは何か」に答
えさせる問題が出たんですね。私が辞書で調べたら、他
人の感情や体験を理解する「能力」とありました。
福岡:息子さんは試験用紙に「自分では誰かの靴を履いてみ
ること」と書いた。いい答えですね。
ブレンディ:エンパシーと似た言葉に「シンパシー」(sym
pathy) があり、どちらも「共感」と訳されます。ただ
シンパシーは「かわいそう」や「共鳴する」という感情
の動きで、対象となるのは特定の人です。一方、エンパ
シーは、他者の立場を想像して、理解しようとする自発
的で知的な作業です。
今回は、特に印象に残したいところに、
マーカーラインを引いてみました。
無知が恐怖心をわき上がらせるというのは理解できます。
そして「エンパシー」の意味するところは、
大事な知的作業です。
この本も読みたくなりました。
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