「山海記」② 蛇が付く地名は鉄砲水や山津波が発生した場所に付く
今日は令和2年1月24日。
前記事に引き続き「山海記」(佐伯一麦著/講談社)より
引用していきます。
待合所にあったチラシを見ると、高速道路を使わない路線バス
としては日本で一番長い距離を走り、全長166,9メートル、
何と百十七もの停留所を数えるという。
(13p)
奈良県の「八木駅」から和歌山県の「新宮駅」までの
奈良交通株式会社の路線バスのことです。
※参考:奈良交通(株)運行系統図
☝ ここを見ると、日本一長い路線のバス停を
見ることができます。
全てを停まるバスの運転手さんはたいへんだと思います。
それから三年後(2014年)、広島市でも七十四名の死者を
出した大規模土砂災害が発生した。特に被害が大きかった安佐
南区八木三丁目の旧地名は上落地芦谷で、さらにその前は蛇落
地悪谷(じゃらくじあしだに)だったと知って、前の話との類
似に驚かされ、暗然たる思いに沈んだ。
土砂崩れのことを蛇抜けとも言い、蛇が付く地名は鉄砲水や山
津波が発生した場所に付けられる。大きな蛇が頭上から落ちて
きたときの恐怖を彼は想った。昭和四十二年八月に羽越水害に
襲われた荒川が流れる新潟県の関川村を訪れたときにも、村に
は大蛇による洪水伝説のある蛇喰(じゃばみ)という集落があ
った。東京の目黒区にもかつては蛇崩(じゃくずれ)という地
名があり、大水で崩れた崖から大蛇が出たという伝説があった
が、昭和七年の目黒区誕生を機に姿を消した。交差点にはいま
でも名前が残されているので、彼は電気工として都内を駆け巡
っていた頃に目にして、妙な名前だと思ったものだった。確か
に蛇と付くと、耳触りのよい地名ではないので、「あし」を「
よし」と言い換えるのと同じように、名前を変えたい思いもわ
からないではないが、地名の改竄(かいざん)は歴史の改竄に
繋がる。
(48~49p)
新潟県関川村の「蛇喰」にグーグルアースで迫ります。
羽越(うえつ)水害については、ここを読みました。☟
関川村では、堤防の決壊によって34名の死者が出たそうです。
堤防決壊の歴史は今に始まったことではないのです。
つづく
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