「温暖化」をどう考えるか⑤/温暖化への適応策
今日は令和元年11月8日。
前記事の続きで、
「異常気象と人類の選択」(江守正多著/角川SSC新書)から
引用します。2013年9月刊行の本です。
もう一つ、重要な対策の考え方として「適応」があります。
これは「2℃」などの目標達成のための対策ではありませんが、
ついでに説明しておきます。
温暖化への「適応策」は、温室効果ガスの排出量を削減する
「緩和策」とは違い、実際に生じてしまった気候の変化に対して、
なるべく悪影響を受けないように、あるいは良い影響を
引き出すように、社会の側でさまざまな対応をすることです。
たとえば、農業への悪影響を減らすために
品種改良や農業技術の改良を行ったり、
熱中症の被害を減らすために保健指導を行ったり、
洪水の被害を減らすために治水対策を強化したり、といったことです。
適応策は、気温上昇を何℃に抑えるにしても、
多かれ少なかれ実施する必要があります。
適応は、発展途上国の開発や防災対策と一石二鳥になることが
多いので、ある程度は積極的に推進することに意味があります。
しかし、一般的にいって、気温上昇がどんどん大きくなり、
したがって温暖化の影響が大きくなると、適応策では
しのぎ切れなくなる限界があるでしょうから、
適応策だけに頼ればよいというものではありません。
それに、適応策の種類にもよりますが、適応策にもコストが
かかることに注意が必要です。
また、ダムなどの治水対策が生態系破壊につながったり、
適応の名目に便乗して開発が大盤振る舞いになると、
実際にはあまり役に立たないインフラをたくさん作って
しまったりする心配もあるでしょう。
(145~146p)
あらためて書きますが、台風15号、19号の被害は、
適応策ではしのぎ切れないことを突き付けられたように思います。
6年前の本ですが、今年のことを予言したような感じです。
YouTube: 長野市の新幹線車両センターが水没 JR東日本(19/10/13)
温暖化問題において人類が置かれたこの状況を
病気にたとえると、慢性の生活習慣病を放っておいたら、
大手術をしないと完治しないというところまで
病状が進行してしまった、という状況に近いと思います。
手術するしかないじゃないか、と思うかもしれません。
しかし、手術が失敗して病状が悪化するかもしれないし、
莫大な治療費がかかります。
では、病気の進行を受け入れて、苦しい症状が出ないことや
画期的な新薬が開発されることを祈るほうがよいでしょうか。
この状況で、何が正しい判断かは自明でないと思います。
(148p)
6年前にこう考えていたのですね。
そして6年経って今があります。
つづく
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