「雪虫の飛ぶ日」⑥/函館大火
今日は令和元年10月29日。
「雪虫の飛ぶ日 新十津川物語6」
(川村たかし著/偕成社)からの引用です。
この本のラストは、昭和9年(1934年)3月21日の
函館大火です。
引用します。
焼けた家はなんと2万4186戸。死者2054人。
ゆくえ不明662人。重軽傷者12600人。
この火のおぞましさは、わずか3時間に2万戸の家を
焼きつくした速さにある。
東海岸の人びとはこのために海中ににげ、高波にさらわれた。
ゆくえのわからない人たちは、ほとんど波にもっていかれたのだ。
浜をつたって東へ東へとにげた者は、火に追われる形になった。
そのうえ、大森橋もその東の新川橋も古い木橋だった。
橋は人の重みでくずれおちた。
川の手まえで追いつめられた群衆は、
荷物とともに焼けて死んだ。
海水も零下12,13度だったから、おおぜいが凍死した。
勇敢な話もうわさにのぼった。
図書館長は、地下の鉄扉に一晩じゅうバケツの水をかけつづけて、
松前藩以来の貴重な資料を守った。
市役所のふたりは800冊もの戸籍簿を、安全なところへうつした。
電池室を死守した電話局の職員、
人を助けて殉職した警官や消防士・・・。
だが、夜明けの焼けあとはむごたらしかった。
焼けこげてぼろぼろの服を着た人が、さまよい歩く。
人の焼けるいやなにおいが、どこへいってもついてまわった。
泣き声とうめき声がたちこめていた。
(254p)
小説で、歴史的な出来事を知りました。
出合ったことにはこだわりたい。
この本が読んでみたくなりました。
2017年刊行で、新しい本であることが魅力。
図書館に置いていないのが残念。
買って読むか迷っています。
でもきっと好奇心に負けます。
副主人公的な恭之助が死んだのは最後の270p。
ーーーフウちゃん、あやちゃん、あい・・・・・。
くちびるがうごいたように見えた。
3人がとりすがったとき、恭之助は大きな深呼吸を
ひとつのこして、あとはもう息がなかった。
87歳だった。
こうやって本を読破できて、いつか読み返したい文章を
ブログに引用できました。贅沢させていただいています。
最後にこの本で一番気に入ったカットを載せます。
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