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2019年10月29日 (火)

「雪虫の飛ぶ日」⑤/除虫菊生産の歴史

  

今日は令和元年10月29日。

  

雪虫の飛ぶ日 新十津川物語6

(川村たかし著/偕成社)からの引用です。

 

もともと(新十津川)村は亜麻や豆類をうえて金にかえてきた。

トウモロコシや馬鈴薯もおおかった。

ところが大正にはいると、みるみる水田がひろがっていく。

第一次世界大戦がおさまって、豆成金、いも成金の代わりに、

米や麦をつくる家がふえた。

時代とともに作物もかわっていく。

昭和になると、きゅうに除虫菊がひろがった。

昭和5年に120町歩だったのに、5倍の600町歩をこえた。

多年生のこの植物は菊のようにのびて、

2年目から白い花をつける。

その後、数年間収穫があった。

手間がかからないのがなによりだった。

茎ごと刈りとって、千歯でしごいて、花をこきおとす。

花の子房に殺虫力があった。

日かげで干したものを6貫めんして麻ぶくろへつめた。

1貫めが5円もするときがあった。

安いときの米1俵の値段である。

(173~174p)

  

社会科教師は、こういう文章が気になります。

除虫菊を調べたくなりました。

それも北海道の除虫菊。

ありました。

石狩ファイル 石狩の除虫菊栽培

いい勉強になりました。すごく。引用します。

除虫菊栽培の栄枯盛衰がわかる説明です。

  

除虫菊はキク科の多年草でムシヨケギクとも呼ばれ、

開花した花を摘み取り乾燥して、蚊取り線香、

蚤取粉(のみとりこ)、農薬などの原料とします。

石狩の除虫菊栽培は、明治25(1892)年

(明治29年ともいわれる)に、花畔(ばんなぐろ)村の

金子清一郎(かねこせいいちろう)が、

和歌山の上山英一郎(うえやまえいいちろう、金鳥の創業者)から

種子を取り寄せて、50株を道内他産地に先駆けて

作付けしたのが始まりです。

金子は製粉した蚤取粉も販売し、他の農家にも現金収入になる

除虫菊をすすめたので、花畔だけでなく親船町などにも栽培が広がり、

明治36(1903)年には全町の栽培面積が1町2反に達しました。

除虫菊は、もともと乾燥した気候と排水の良い砂質の

痩地(そうち)を好むため、石狩に適していたのです。

大正6(1917)年には、二代目金子清一郎を組合長として

「石狩町除虫菊栽培組合」が設立されました。

道内の他の地域でも除虫菊栽培熱は高まり、

特に第一次世界大戦(1914~1918年)後、

ヨーロッパで生産が激減して除虫菊の相場が上昇したのにともない、

北海道の除虫菊栽培は急激に増加し、

大正14(1925)年には国内作付面積の69%を占める、

全国一の産地となりました。その後、金子は昭和7(1932)年に、

和寒(わっさむ)村や倶知安(くっちゃん)町の農家とともに

北海道除虫菊製品工業組合を設立して、

濃厚エキスを「ピレトシッキス」、農業用乳剤および家庭用スプレーを

「ハルク」の名称で商品化し、道内外や海外へも販売しましたが、

昭和14(1939)年に北聯(ホクレン)に買収されています。

また、昭和17(1942)年には戦時体制の中、

石狩町除虫菊栽培組合は石狩町産業組合に統合されました。

第二次大戦後は、アメリカからDDTやBHCなどの

安価な化学農薬が輸入され、除虫菊の殺虫剤は市場での

競争力をなくしていきました。昭和25(1950)年頃には

花畔の一部で作付けされるだけとなり、

昭和35(1960)年頃を最後にまったく作られなくなりました。

   

 

金鳥の創業者上山英一郎が登場し、

かつては北海道が全国一だとわかるワクワクする説明です。

蚤取粉は興味津々です。

花畔を「ばんなぐろ」と読む難読地名にも出合えました。

新十津川村の登場人物も、

除虫菊の歴史の中で生きています。

    

除虫菊は、2つの世界大戦の間が、日本では栽培が盛んで、

北海道をはじめ、広島、岡山、香川、愛媛、和歌山などが

主な産地でした。参考:Wikipedia

本がきっかけで、またいい勉強ができました。  

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