「警官の血」より/刑事柴田三郎 「谷中暮色」が見たい
今日は12月30日。
前投稿の続き。
「警官の血」を読んだことで、
ますます映画「谷中暮色(やなかぼしょく)」
(2009年公開)が見たくなりました。
※参考:ここでも道草 昭和32年7月 東京都天王寺五重塔炎上(2018年12月15日投稿)
↑ ここで予告編を見ることができました。
ここに映画「谷中暮色」のサイトがありました。↓
さらに別の紹介映像を見ることができました。↓
いつかこの映画を見たいです。
天王寺五重塔炎上のことがもっとわかりそうです。
何か情報をおもちの方は教えてください。
今日返す「警察官の血」(佐々木譲著/新潮社)より
もう少し引用します。
捜査二課の刑事、柴田三郎が気になりました。
車の急停車の音がした。
振り返ると、目黒署の警察車だった。
ふたりの私服の男たちがすぐに降りてきた。
和也も名前を知っている、刑事課の捜査員たちだ。
年上の巡査部長が、柴田三郎、
その部下の巡査が、稻垣影だった。
柴田が、角刈りの男に近づいて訊いた。
「何をやってるんだ?」
柴田は、腫れぼったい目をした、風采の上がらぬ男だった。
こわもてでもないし、切れ者という雰囲気も感じさせない。
服装は、スーパーマーケットの衣料品売り場で揃えたように見える。
若い女ならば、からかいの対象にしかねない中年男だった。
角刈りの男は、その柴田が近づくのを見て、
露骨に嘲(あざけ)りの笑みを見せた。柴田が事情を問うと、
男はいましがたと同様、せせら笑うような表情で言い分をロにした。
(下巻 186p)
柴田三郎刑事の姿は馬鹿にされやすいものだったようで、
実際に、暴力団の角刈りの男は、
柴田刑事を見て嘲りの笑みを見せました。
これが11月のこと。
しかし、よく年の2月。
その柴田刑事が、嘲りの笑みを見せた角刈りの男を含めた
詐欺グループを一斉検挙してしまいます。
柴田たちは、大澤弁護士と渡辺工業の過去を洗い、
一見合法的に土地建物を乗っ取られた被害者に接触して、
いくつかの乗っ取り事件の全容を把握した。
そのうえで、浅見進との一件では、
詐欺と恐喝、威力業務妨害、それに公正証書原本不実記載、
同行使が成立すると突き止めたのだ。
四ヵ月にわたる内偵捜査の結果、十分な証拠をもとに
渡辺工業社長や難波篤司(角刈りの男)らの逮捕状を請求、
下りたところで、この日の逮捕劇となった。
その話を聞かされて、和也は柴田の捜査員としての能力に驚嘆した。
このように複雑で、法律の隙間を縫ったような犯罪を、
見事に刑事事件として立件してしまったのだ。
並の想像力や粘りでできることではないし、
並の頭で可能だったこととも思えなかった。
風采で損をしているひとだ、とも思った。
しかし、彼はコロンボ·タイプの刑事なのだとも言える。
警視庁の捜査員は、必ずしも石原裕次郎のプロダクションの
俳優たちに似ている必要はないのだ。
三日後、大澤泰樹弁護士が逮捕された。
このとき和也は、大澤弁護士が柴田と稲垣の
ふたりの捜査員にはさまれて目黒署に入ってくるところを目撃した。
柴田と目が合った。柴田は、例のとおりの、
どこか眠そうな目のままだった。退屈そうにも見えた。
和也が敬意をこめて気をつけの姿勢を取ると、
柴田は一瞬だけ口元をゆるめた。
ふいに、捜査二課、という言葉が思い浮かんだ。
これまで将来の配属先として考えたことはなかったが、
柴田のように仕事ができるならば、選択肢のひとつになる。
自分の適性を考えても、合っている方面かもしれない。
(下巻 205p)
いいですね、柴田三郎刑事。
格好いいじゃないですか。
風采で損をしていても、仕事ができる人は、
やっぱり格好がいいと思います。
頭の良さと粘り。特に粘りを見習いたい。
たとえ最初は嘲りの笑みをされても、
いちいち怒らない。
勝負は仕事。
「警察官の血」の中で、柴田三郎刑事が登場するのは、
下巻の186~205pの中の、さらに一部ですが、
私には印象に残った登場人物でした。
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