「AI vs 教科書が読めない子どもたち」からの引用2/中学生の半数は、中学校の教科書が読めていない状況
今日は6月10日。
前投稿に引き続き、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」
(新井紀子著/東洋経済新聞社)からの引用です。
現在の中学生はどれくらいの語彙が
不足しているのでしょう。
ある公立中学校の社会科の先生に教えていただきました。
大変熱心な先生で、以前から
「教科書が読めない生徒が増えている」と感じ、
社会科の教科書の音読を授業でさせているそうです。
(202p)
この先生に賛成。
私も4月から速音読実践中。
この本を読んで、続けてやっていこうと決めました。
AIが苦手とする問題があります。
2つの文章を読み比べて意味が同じかどうかを判定する
「同義文判定」というジャンルの問題です。
例を挙げましょう。
たとえば、こんな問題です。
【問3】次の文を読みなさい。
幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、
大名には沿岸の警備を命じた。
右記(ここでは上記)の文が表す内容と、
以下の文が表す内容が同じか。
「同じである」「異なる」のうちから答えなさい。
1639年、ポルトガル人は追放され、
幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。
沿岸警備を命じられたのは大名ですから、
答は「異なる」です。当然ですよね。
でも、A1には結構難しいのです。
なにしろ、出てくる単語はほぼ同じですから。
やっぱり人間のほうが優秀だと喜べるかというと、
残念ながらそうではありません。(中略)
なんと中学生の正答率は57%だったのです。
どういうわけか中学3年生が一番低くて55 %です。
私自身、その結果を知ったときに愕然としました。
(中略)
同義文判定の問題は「同じ 異なる」の二択ですから、
コインを投げて裏表で解答しても50%正解します。
ということは、中学生の正答率は
ほぼコイン投げ並みだということです。
(205~206p)
しかし、恐ろしいのは、AIと差別化しなければならない
「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」の
ランダム率(まったくできない率)です。
「推論」は4割,「同義文判定」は7割を超えています。
つまり、教室で座っている生徒の半分が、
サイコロ並みだということです。
推論や同義文判定ができなければ、
大量のドリルと丸暗記以外,勉強する術がありません。
推論の例題4 ( P, 192)を見てください。
「エベレストは世界で最も高い山である」が提示文です。
それに対して、「エルブルス山はエベレストより低い」かどうかが
わからない生徒は、「富士山はエベレストより低い」
「キリマンジャロはエベレストより低い」「クック山はエベレストより低い」
と、あらゆる例を覚えなければならないでしょう。
つまり「一を聞いて十を知る」ために必要な
最も基盤となる能力が推論なのです。。
これが、私たちが「中学生の半数は、中学校の教科書が読めていない状況」と
判断するに至った理由です。
数学の定義に従って4つの選択肢の
どれにあてはまるかを選ぶ「具体的同定(数学)」のランダム率は、
なんと約8割です。
「偶数とは何か」「比例とは何か」という定義を読んで、
偶数や比例を選ぶだけの、計算も公式も必要ない問題において、
中学3年生の8割がサイコロ並みにしか答えられなかったのです。
こんな状況でプログラミング教育を導入できるのでしょうか。
プログラミングはまさに数学的な定義のみでできているのですから。
日本の科学技術の未来は暗いと
言わざるを得ないでしょう。
(215~216p)
まだつづく。
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