「きのこ雲の下で何が起きていたのか」その9/トラックに載せてもらえなかった少女
今日は8月21日。
前投稿に引き続き、昨年の8月6日放映の
「NHKスペシャル きのこ雲の下で何が起きていたのか」
の聞き書きをしていきます。
ナレーター:壊滅地帯との境界にあった御幸橋。
写真が撮られた午前11時。救助活動の最前線になっていました。
この頃、御幸橋から先は、入れなくなっていたからです。
壊滅地帯は、炎に包まれていました。
写真の中央に写る制服姿の男性。
やけどの治療に当たっていた警防団だと言います。
負傷者を救助するため、軍のトラックもやって来ました。
郊外の病院へ繰り返し運んでいたのです。
この人を救う現場で、命の選別が行なわれていた
という証言がありました。
大やけどを負っていた坪井直さんです。
それは坪井さんの目の前で起こりました。
トラックの荷台に、軍人たちが負傷者を載せていた時のこと。
幼い少女がトラックに駆け寄り、乗り込もうとしていました。
その時、軍人が叫びました。
(軍人):「こら!女こどもは後回しだ」
若い男性を優先していたと言います。
坪井直さん:私も、声でびりっとしたぐらいのもんだから、
怖い声じゃったであれえ。
「もう、戦争に役立つ者だけ乗れえ」って、こうなったわけ。
まあ、徹底していたなあ、そういう意味じゃあ。
ナレーター:軍人に怒鳴られた少女は、泣きながら走り去りました。
その先にあったのは、燃え盛る街でした。
坪井さん:心の中でねえ、
「おい、火のないところへ逃げよ。火のないところへ逃げよ」
そればっかり祈ったじゃあ。その子どもに対して。
それ、子どもだろう。だから辛いなあ。
大人なら、みんなで戦争してね、がいがいやったんだから
この人ら(子どもたち)に何の責任があるかとかね。
彼らが死ななければならない理由は
どこにあるのかと思ったらねえ、
よう助けなかった自分がふがいないと同時に、
そのことがどうしてもね、そりゃあ忘れられん。
もう忘れることはできんね。
ナレーター:きのこ雲の下には、助けを求める小さな命さえ
顧みられない、戦争の現実があったのです。
怒鳴られた後、燃え盛る火の方向に走り去る少女の映像は、
とても辛い。動転し、親のいる方向に戻ったのか。
この映像が、ずっと頭の中に焼きついていた坪井さんも
さぞ辛かったと思う。
小さな命が生きながらえていることを祈ります。
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