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2016年8月21日 (日)

「きのこ雲の下で何が起きていたのか」その9/トラックに載せてもらえなかった少女

  

今日は8月21日。

  

前投稿に引き続き、昨年の8月6日放映の

「NHKスペシャル きのこ雲の下で何が起きていたのか」

の聞き書きをしていきます。

  

ナレーター:壊滅地帯との境界にあった御幸橋。

  写真が撮られた午前11時。救助活動の最前線になっていました。

  この頃、御幸橋から先は、入れなくなっていたからです。

  壊滅地帯は、炎に包まれていました。

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  写真の中央に写る制服姿の男性。

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  やけどの治療に当たっていた警防団だと言います。

  負傷者を救助するため、軍のトラックもやって来ました。

  郊外の病院へ繰り返し運んでいたのです。

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  この人を救う現場で、命の選別が行なわれていた

  という証言がありました。

  大やけどを負っていた坪井直さんです。

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  それは坪井さんの目の前で起こりました。

  トラックの荷台に、軍人たちが負傷者を載せていた時のこと。

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  幼い少女がトラックに駆け寄り、乗り込もうとしていました。

  その時、軍人が叫びました。

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(軍人):「こら!女こどもは後回しだ」

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  若い男性を優先していたと言います。

  

坪井直さん:私も、声でびりっとしたぐらいのもんだから、

  怖い声じゃったであれえ。

  「もう、戦争に役立つ者だけ乗れえ」って、こうなったわけ。

  まあ、徹底していたなあ、そういう意味じゃあ。

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ナレーター:軍人に怒鳴られた少女は、泣きながら走り去りました。

  その先にあったのは、燃え盛る街でした。

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坪井さん:心の中でねえ、

  「おい、火のないところへ逃げよ。火のないところへ逃げよ」

  そればっかり祈ったじゃあ。その子どもに対して。

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  それ、子どもだろう。だから辛いなあ。

  大人なら、みんなで戦争してね、がいがいやったんだから

  この人ら(子どもたち)に何の責任があるかとかね。

  彼らが死ななければならない理由は

  どこにあるのかと思ったらねえ、

  よう助けなかった自分がふがいないと同時に、

  そのことがどうしてもね、そりゃあ忘れられん。

  もう忘れることはできんね。

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ナレーター:きのこ雲の下には、助けを求める小さな命さえ

  顧みられない、戦争の現実があったのです。

  

怒鳴られた後、燃え盛る火の方向に走り去る少女の映像は、

とても辛い。動転し、親のいる方向に戻ったのか。

この映像が、ずっと頭の中に焼きついていた坪井さんも

さぞ辛かったと思う。

小さな命が生きながらえていることを祈ります。  

 

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