「きのこ雲の下で何が起きていたのか」その3/河内光子さんの証言
今日は8月11日。
前投稿に引き続き、昨年の8月6日放映の
「NHKスペシャル きのこ雲の下で何が起きていたのか」
の聞き書きをしていきます。
ナレーター:髪の毛はひどく縮れて、ボサボサになっています。
服は破け、肌は剥(む)き出しです。
人々の多くは裸足。
着の身着のままで逃げてきたことがうかがえます。
2枚の写真を並べてみると、
同じ人物が写っていることに気づきました。
セーラー服を着た女性です。
左腕は服が破れ、血がにじんでいます。
手は傷ついているようにも見えます。
取材を続けると、この女性が今も健在であることがわかりました。
河内光子(こうちみつこ)さん。83歳です。
当時、広島女子高等学校の2年生。
同級生と映画やおしゃれの話をするのが大好きな13歳でした。
写っているのが自分だとわかった理由は、
セーラー服の三角襟(えり)。
山口県に住むいとこからもらったものでした。
背中にはけがを負っていました。
河内さん:こうやったら(服を手で払ったら)、
ガラスがいっぱい、みんなついているんです。破片が。
血まみれですけどね、痛いという意識はなかったですね。
ナレーター:この時、河内さんは、友だちのケガのことで
頭がいっぱいでした。隣に写っているのが友だちです。
(友だちは)服が破れ、肌が露わになっています。
橋にたどり着くまでに、何があったのか。
8月6日の朝、河内さんたちは、戦地に行った大人の代わりに、
働いていました。
爆心地から1.6㎞の貯金局で仕事をしていた河内さん。
午前8時15分、原爆が炸裂。
秒速70mを越える猛烈な爆風に襲われます。
河内さん:シャーって何か、窓いっぱいの火の塊みたいなのが
入ってきたんです。
狙われたっと思ったですね。
「きたー」と叫んだのを覚えているんです。
自分の身体が、持ったカードと一緒にフワ~と飛んだんです。
わーっと思ったら気絶したんです。
ナレーター:河内さんは吹き飛ばされ、壁にたたきつけられました。
意識を取り戻して目にしたのは、
内臓が飛び出た姿で息絶えていた女の子。
その子を踏まないように外へ出ると、
顔を血で染めた友だちがいました。
河内さん:友だちがね、私に抱きついてきたんです。
「みっちゃん 頭が割れた」と言うんです。
「ええ!」って言うて、(友だちは)血まみれでした。
それで私に抱きついたから、私ここら(体前面)が血まみれです。
ナレーター:壊滅地帯で火災が確認された場所です。
原爆投下とともに発生した火災は、徐々に広がっていきました。
河内さんは、友だちと自宅をめざしますが、
火災で近づけないと聞き、引き返します。
通れる道を探しながらたどり着いたのが、御幸橋でした。
投下から3時間後。何が起きたのかわからないまま、
傷ついた体でここ(御幸橋)にいたのです。
河内さんにとって忘れられない光景が写真に写っています。
この「忘れられない光景」については、次の投稿で。
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