「読みたいことを、書けばいい。」を読みました
今日は令和4年10月25日。
この本を読みました。
「読みたいことを、書けばいい。」
(田中泰延著/ダイヤモンド社)
私の身近には、「NHKはだめだ」という人がいます。
でも田中さんは、「NHKスペシャル」を推薦していました。
書くという行為において最も重要なのはファクトである。ライターの
仕事はまず「調べる」ことから始める。そして調べた9割を棄て、残
った1割を書いた中の1割にやっと「筆者はこう思う」と書く。
つまり、ライターの考えなど全体の1%以下でよいし、その1%以下
を伝えるためにあとの99%以上が要る。「物書きは調べることが9
割9分5厘6毛」なのである。
たとえば、テレビ番組で参考になるのは『NHKスペシャル』だ。あ
の番組では、徹底して調べた事実、そしていままで明らかになってい
なかった新事実が提示され、作り手の主義主張を言葉にすることはな
い。ファクトを並べることで、番組を観た人が考える主体になれる。
調べたことを並べれば、読む人が主役になれる。
調べもせずに「文章とは自分の表現をする場だ」と思っている人は、
ライターというフィールドでは仕事をすることができない。
(147~149p)
そうなんです。「NHKスペシャル」は
徹底的に調べたことを教えてくれる番組です。
見た後に、確かに「番組を観た人が考える主体」になっているのです。
事象とはすなわち、見聞きしたことや、知ったことだ。世の中のあ
らゆるモノ、コト、ヒトは「事象」である。それに触れて心が動き、
書きたくなる気持ちが生まれる、それが「心象」である。
その2つがそろってはじめて「随筆」が書かれる。人間は、事象を
見聞きして、それに対して思ったことを書きたいし、また読みたい
のである。
そしてネット上で読まれている文章のほとんどはこの「随筆」にあ
たるものである。
(55p)
私がブログに書いていることは、随筆なんだよな。
私は高校生の頃から、書きたいという気持ちは継続しています。
形を変えて、ずっと実行してきました。
子どもに効くメッセージは大人の脳の中の子どもの部分にも効くの
だ。どこからみても中年男性の総務課長にも、心の奥底には小学生
の頃の自分が入っている。結局、人間は全員子どもだと仮定しても
いい。
(83p)
これは面白い発想だと思いました。
なるほどです。
読み手など想定して書かなくていい。その文章を最初に読むのは、
間違いなく自分だ。自分で読んでおもしろくなければ、書くこと自
体が無駄になる。
(99p)
思えば、私は読み手を想定していない。
書きたいから書いています。
書き終えて、充実している時もあれば、消化不良の時もあります。
充実した時の文章は、成功しているのでしょう。
その回数を増やしていきたい。
「自分が読んでおもしろい文章」とは、「まだだれも読んでいない
文章を自分で作る」ということである。
たとえば、映画を観る。「ここがおもしろかった」「この場面は疑
問だ」など、さまざまなことを思うだろう。これが前章で述べた「
映画という事象によって心象が生じる」という事態である。
だが、映画のパンフレットがある。『キネマ旬報』『映画秘宝』な
どの雑誌にはプロの評論家の意見が載っている。ラジオの映画解説
もあれば、YouTubeの映画紹介もある。また無数の映画レビューや、
映画ブログ、ツイッターの感想も目に入ってくる。
そこで自分の感想と同じポイントを、だれかの手で自分より豊かな
語彙で書かれていたり、自分が感じた疑問点について、なるほどと
膝を叩く考察があますところなく展開されていれば、あなたはいま
さら何も書く必要はない。
他人と同じことを書いてネットの世界に放流すると、あなたのもと
に寄せられる反響は「〇〇さんが言っているのと同じですね」であ
る。
(101~102p)
田中さんの目指している書きものはレベルが高いです。
「まだだれも読んでいない文章を自分で作る」はハイレベル。
でもたまにはそういう書きものに挑戦してもいいかなと思う。
ふだんの私の書きものは、備忘録的な内容なんだなと
この本を読んで、自覚するようになりました。
田中さんの、文章に対する取り組みは、
私にとっては、授業づくりにあたるのかなと思い始めました。
授業を作るのは、決して楽しいことではありません。
とても時間がかかります。
教科書を進めなくてはいけないが、生徒に紹介したいことが、
たくさんあります。
教材研究をすればするほど、そう思います。
伝えたいことをどうやって授業に折り込んでいくか。
田中さんは、文章を書く時に、調べて、9割を棄てろと言います。
授業でも、それに近いことを感じます。
伝えたいことを全部紹介しなくても、
生徒は思った以上に伝わっていることを感じます。
授業づくりを頑張ったことが、少しでも生徒に影響として残って、
将来の行動を左右したのなら、やった甲斐があったと言えます。
毎時間、ノートに授業を感想を書かせてきたので、
授業づくりの結果を、直接聞くことができるのは幸いです。
田中さんは、そんなやりとりを文章でやろうとしています。
たまには、徹底的に調べて、「NHKスペシャル」のような文章に
挑戦するのもいいなと思わせてくれた本でした。
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