「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」読破
今日は令和3年11月12日。
「平将門4」と並行して読んでいたこの本を読破しました。
「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」
(石橋克彦著/集英社新書)
南海トラフ巨大地震が起こることが想定されているのに、
トンネルばかりで高速な鉄道を作っても大丈夫なのか。
リニア新幹線は、今からでも遅くないから、
やめるべきだという本でした。
今まで気がつかなかった視点を与えてくれた本でした。
72pからの「リニア活断層地震の惨状」を頑張って引用したい。
東海道新幹線においては、南海トラフ巨大地震が発生して(中略)
富士川河口断層帯が連動したとき、そのなかの入山瀬(いりやませ)
断層が同線の富士川鉄橋の真下を通っているから、最悪の場合は鉄
橋が切断され、西側が何mか隆起する。列車が疾走していれば、定
員1300人の16両が引きちぎられ、跳ね上げられて、河原や川
岸に叩きつけられる。超大型旅客機が墜落したような惨状を呈する
だろう。
しかし、それでもまだ、リニア中央新幹線と交差する活断層で大地
震が発生するよりはましだろう。ひとえに明かり区間であるからだ。
多数のクレーン車を投入し、人海戦術で車両を切断し、残骸を吊り
上げ、乗客の救出にあたることができる。路線の復旧も、困難では
あろうが、1~2年で何とかなるかもしれない。
リニア中央新幹線の場合は、(中略)断層帯のどれかでM7前後以
上の大地震が起こると、そうはいかない。ほとんどはトンネル内で
ズレ破壊が起こる。現場を疾駆する列車がいても早期地震警報シス
テムは用をなさない。地震発生と同時に、トンネルと列車がある幅
で切断される。逆断層が多いが、その場合は何mかの段差を生じる
だけではなく、隆起側が斜めに沈降側にのし上げる形になり、地盤
の短縮が生じる。(中略)山岳トンネルは路盤から天井までが
7.7メートルだが、その半分近くが食い違ってしまうことも起こ
る。列車はちぎられ、砕かれて、一部が地山に咥え込まれてしまう
だろう。
時速505キロが瞬間的にゼロになったとき、断層運動に直接巻き
込まれなかった車両であっても、シートベルトもなしの乗客がどう
なるのだろうか。最寄りの斜坑も破壊されてしまえば、救助隊はト
ンネル坑口から入るのだろうが、ズレ破壊した断層から離れたトン
ネル内でも損壊が多かったり(とくに逆断層の隆起側)、ほとんど
全車両やガイドウェイが破壊し散乱していたり、大量出水があった
りして、容易にズレ破壊現場には近づけないだろう。余震が頻発し
ており、大余震でトンネルの損傷が拡大するかもしれない。そもそ
も情報ケーブル類が切断され、どこで何が起きたかわからないので
はなかろうか。
悪夢の大惨害の期間が過ぎたあと、復旧に関しても、明かり区間な
らば何とか可能性を探れるかもしれないが、トンネル区間では困難
を極めると思われる。2~3m以上の横ズレした場合でも、逆断層
で大きな段差と広範囲の傾動が生じた場合でも、長距離にわたる再
掘削が必要になるだろう。しかし、地震の規模、被害の程度、地質
条件などによって、またリニア新幹線に対する社会の見方などによ
って、最悪の場合には経費的・技術的制約も含めて、復旧せずに廃
線にするという判断も強いられるかもしれない。
(72~74p)
トンネル内での事故の恐ろしさがわかる文章です。
そして廃線となるかもしれないという文章を読むと、
福島第一原子力発電所が思い浮かびました。
巨大なものが廃炉・廃線する可能性を感じます。
トンネル内を時速500km以上で走る危険性も感じます。
そんなに速く走る必要が、現時点であるのでしょうか。
出来上がるのが当たり前と思っていたリニア新幹線。
考えさせられました。
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