小説「熱源」が読みたくなりました
今日は令和2年2月21日。
2月17日の朝日新聞朝刊の「天声人語」は
書き留めておきたいと思いました。
「豪州の日」と呼ばれる記念日がある。1788年1月26日
に英国の船団が上陸したことを祝う。豪州国民の休日だ。しか
しそれは先住民からすれば「侵略の日」に他ならない。祝賀行
事をやめる自治体が出ていると、先日の紙面にあった▼ある市
長からは「先住民の追放、言語や文化の破壊の始まりだった」
との発言もあったという。どこに視点を置くかにより、歴史は
その像をがらりと変える。直木賞に選ばれた歴史小説『熱源』
は、明治以降の近代化をアイヌ民族の目から描いている▼樺太
から北海道の石狩川沿いに集団移住させられた主人公の少年は、
学校で「文明人たれ」と教えられた。アイヌ民族を未開人扱い
することと同義である。そんな和人の国は列強から野蛮人扱い
されないよう、富国強兵へともがいていた▼文明とは何か。ア
イヌ集落の長に作者はこう語らせる。「馬鹿で弱い奴は死んじ
まうっていう、思い込みだろうな」。その帰結として、日露戦
争そして第2次大戦の戦場がある▼北海道と樺太を軸に、東京、
ロシア、南極にまで小説の舞台は及ぶ。作者の川越宗一さんは、
旅行で訪れた北海道で歴史に触れ、いちから調べたという。読
んでいて、登場人物たちと同じ時代を生きているような気持ち
になる▼他者の目で歴史を見る。そのことに私たちは慣れてい
ない。だからこそ文学の力が、大きな助けになる。「日本は一
つの民族が続いている」などと口走っていた政治家は、手にと
ってみただろうか。
「北海道」「石狩川」「集団移住」という用語が、
私の好奇心のアンテナにピピッと来ました。
『熱源』の著者は、北海道の旅行がきっかけで
この本を書いたという点も注目です。
そのきかっけについて、次のサイトで著者が語っています。
九州にルーツを持ち大阪で生まれ育った著者が、北海道の先住
民族たちの物語を書くことになったきっかけは、夫婦旅行だっ
た。妻のリクエストで二〇一五年夏に北海道へと足を運んだと
ころ、知られざる歴史と出合った。「たまたま室蘭から足を延
ばして、白老町のアイヌ民族博物館へ立ち寄ったんです。そこ
に、ブロニスワフ・ピウスツキという人物の銅像があったんで
すよ。説明書きには、一九世紀末から二〇世紀前半にかけて活
躍したポーランド人の民族学者で、アイヌを研究していたと記
されていました。彼はわざわざ地球を約半周してきて、北海道
の少数民族研究の先駆者になった。その歴史的事実に不思議さ
というか違和感を覚え、ピウスツキについて調べ始めたんです。
その過程で樺太出身のアイヌ、いわゆる〝樺太アイヌ〟であり、
日本初の南極探検隊に参加した山辺安之助という人物の存在を
知りました。ピウスツキと山辺安之助が出会い、二つの人生が
交差したポイントを軸に、物語を生み出せないだろうかという
構想が生まれたんです」
違和感から始まった小説でした。
ワクワクします。
小説によって、隠れていたものが表に出てきたのです。
これぞ歴史小説。
読んでみたくなりました。
もうじき復職で、あわただしくなると思いますが、
読書は続けたいなあ。
読んだっていいですよね。
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