「知られざる国語辞書の世界」その2・・・「恋」の語釈
今日は4月6日。(うっているうちに7日になってしまった)
3月23日にBS-JAPANで放映された
番組「知られざる国語辞書の世界 テレビ史上初!ことばサミット」から。
上の投稿のつづき。
ゲストの小島慶子さんの話。
小島「私ね、新明解国語がわりと好きで、
だってね、二枚貝にしたってね、はまぐりだけひいきにしているんですよ。
はまぐりのこと、最もうまいとか書いてあって、あさりとしじみはあっさり書いてある。」
「魚にしたって、うまいと書いてあるのと、書いていないのがある。」
だから、小島さんは新明解国語辞典が気に入っているそうです。
ゲストで気になったのが、サンキュータツオさん。
「学者芸人」?
この番組に呼ばれるべくして呼ばれた人。
著書も気になります。
図書館にはないようなので、注文してみようかな。
話はすすんで、語釈の話。
辞書の特徴を最もよく表しているのが「語釈」
それぞれの辞書が、「恋」をどう説明しているか比較しました。
「広辞苑」
【恋】
一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと。
広辞苑では、語釈を古いものから順番に表記しているようです。
上記の語釈の次に書かれているのが次の語釈。
特に男女間の思慕の情
男女間のあいだで「恋」を使うのは新しいことなのです。
「岩波国語辞典」
【恋】
異性に愛情を寄せること、その心。
上記の語釈の後に、三角印で次の語釈があるそうです。
▽本来は(異性に限らず)その対象にどうしようもないほど引きつけられ、
しかも満たされず、苦しくつらい気持ちを言う。
「恋は楽しい夢じゃもの」のような言い方は、1910年代ごろからのもの。
つまり恋は元々苦しいものであって、楽しくなったのは20世紀に入ってからというわけです。
これは面白い薀蓄。
「三省堂国語辞典」
これは、写真の飯間さんが担当した語釈だそうです。
【恋】
(男女の間で)好きで、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、
満たされない気持ち(を持つこと)。
編集会議で、「恋は満たされないの?」が議論されたそうです。
飯間さんの説。
子どもが親を恋う(こう)
母を恋う子どもは、母親がいない状態。今ここにいない状態。
「早くお母さん、帰ってきて」「早くお母さんに会いたいよ」
この気持ちが「恋う」です。
それが異性に対して向けられた時に「恋」ということになるわけです。
目の前にいて、毎日一緒に生活していると、それは「恋」じゃないということです。
この説も納得。
「新明解国語辞典」
【恋】
特定の異性に深い愛情をいだき、その存在が身近に感じられるときは、
他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が高揚する一方、
破局を恐れての不安を焦燥に駆られる心的状態。
新明解は、言葉で言葉がどれくらいしっかり説明しきれるかに懸けている辞典。
そのため、語釈が他の辞書よりも長めになるそうです。
ゲストからは、不安をあおる語釈だとの発言あり。
「大辞林」
【恋】
特定の異性に強く惹かれ、会いたい、ひとりじめにしたい、
一緒になりたいと思う気持ち。
「大辞林」は、「広辞苑」とは逆で、語釈は新しいものから順番に表記しているそうです。
上記の語釈が最も新しく、2番目に書いてある語釈が次のもの。
古くは異性に限らず、植物、土地、古都、季節、過去の時など
目の前にない対象を慕う心にいう。
三省堂と同じように、目の前にいないものに恋するというわけです。
昔の「恋」のイメージがわかってきました。
「日本国語大辞典」
「このフリップは不公平。20分の1も書いていない」と言って、フリップを読みました。
【恋】
人、土地、植物、季節などを思い慕うこと。
これが最も古い語釈だそうです。
今の「異性」に対する「恋」は新しいもののようです。
万葉仮名では「孤悲」と漢字を当てて「こひ」と読んでいたそうです。
「孤独」の「孤」に、悲しい。
昔の苦しくつらい「恋」を表している万葉仮名だと思いました。
「明鏡国語辞典」
【恋】
特定の異性(まれに同性)を強く慕うこと。
編集者正木さんが言うには、(まれに同性)の部分にこだわったそうです。
言葉の定義をする時に、実際の使われ方を調べます。
どういう場面で、どういう人に使われているか調べたそうです。
その結果、無視できないくらいあったということで、
(まれに同性)を加えたそうです。
誰が「恋」を選んだのかわかりませんが、「恋」の語釈がいろいろあり、
「恋」の意味を深く知ることができました。
各辞書の特徴もわかって良かったです。
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