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2022年12月24日 (土)

本「アンゲラ・メルケル」④ 東ドイツの長所

   

今日は令和4年12月24日。

  

前記事に引き続き、

「アンゲラ・メルケル 東ドイツの物理学者がヨーロッパの

母になるまで」(マリオン・ヴァン・ランテルゲム著

清水珠代訳 東京書籍)から引用します。

  

ポツダムの周囲に数多くある湖のひとつ、グリーブニッツ湖のほと

りの広い庭園で彼らはゆったりとお茶を飲んでいた。シュレンドル

フが率いた伝説的なバーベルスベルク映画スタジオも目と鼻の先だ。

昔の東西の境界が湖の真ん中を通っていたので、夜になるとここか

ら命がけで西側へ逃亡しようとする東ドイツ人が後を絶たなかった

ことを思い出した人もいた。監視塔が投げかける光のあいだをかい

くぐって岸から岸まで泳いで渡るのは至難の業だった。1980年

代、まさにこの場所で、自由を求めて死んだ人が18人もいたのだ。

(115p)

  

シュレンドルフは映画「ブリキの太鼓」の監督です。現在83歳。

東西冷戦がなければ、死ななくてすんだ18人です。

  

彼らはまたとない時代を迎えたと感じていた。再統一されたドイツ

にとって途方もないチャンス、二つの世界のいいとこ取りをして国

を作り変えるためのこのチャンスをどう生かすか、語り合った。皆

で力を合わせて新しい国作りを始めねばならないと考え、新生ドイ

ツ建設への貢献を模索することを集まりの目標に定めた。彼らは、

東と西で残すよう努力すべきものをひとつひとつ挙げたり、制度や

習慣についてそれぞれどちらが良いか検討したりした。西ドイツの

長所は、起業の自由、言論の自由、出版と報道の自由、民主的方法

など、すらすらと挙がった。東ドイツの方は、あまりはっきりしな

いように思われるが、じつは選ぶのに困るほどあった。助け合い、

慎ましさ、人々の間の連帯、隣近所で行なう土曜日の共同活動、無

料の保育所、職業上の男女平等などが挙げられた。

(119=120p)

  

東西ドイツの併合の時には、こんなふうに考えている人たちが

いたんだなと思いました。

いい考え方だなと思います。

   

アンゲラは、東ドイツの人間が共産主義国家の独裁政権下でどんな

苦労をしてきたかを知っていた。犠牲になる者もいれば、加害者に

なる者もいたが、大方はメルケル自身がそうであったように、どち

らでもなかった。英雄でもなく冷血漢でもなく、ただ人間味のない

受動的な態度を取らざるをえず、ちまちまと妥協をしながら、国家

権力が私的領域に介入し、個人が潜在的密告者になる全体主義機構

の煩わしさから逃れようとした。アンゲラは服従と警戒心によって

骨抜きになった人々を知っていた。

(123p)  

   

この本で、東ドイツの雰囲気が少しは見えてくるようになりました。

  

その後、2011年に発生した福島の原発事故をきっかけに、(メ

ルケルは)突如として方針を転換し、脱原発へと大きく舵を切る決

断をした。原発稼働年数延長を主張してきたCDU幹部は愕然とし

たが、メルケルはいつも通り、連邦議会の党派を説き伏せた。経済

界は怒りを浴びせた。慎重で「波風を立てないこと」が信条だった

アンゲラ・メルケルが、その経歴において珍しく大胆な決定を下し

たのはこのときが初めてである。

メルケルがふたたびこうした思い切りを見せたのは2015年、ド

イツに百万人の難民を受け入れる決断をしたときだ。福島の原発事

故後の豹変をもらたしたのは、勘と計算の両方である。原子力発電

所の爆発により人命が危険にさらされたことに衝撃を受けて反応し

たという意味で勘であり、問題に関する世論の高まりを察知し、そ

れに合わせて動くという得意技を見せたという意味で計算だったと

いえる。

(129~130p)

   

メルケル首相が視野に入ってきたのは、

この2つの決断の時だったと思います。

(あとはコロナ対策かな)

ドイツは脱原発に舵を切りました。

しかし、昨日の新聞によると、

本年度中で原発は全部止める計画は、

ウクライナとロシアの戦争の影響で、

エネルギー不足になり、延期となったようです。

政治は複雑です。

  

   

つづく

 

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