2日間で読み切った「爆弾」
今日は令和4年8月19日。
ただ日が流れていくのがいやで、
何かやり遂げたいと思って、
昨晩はこの本を最後まで読み切りました。
晩の0時30分までかかりました。
「爆弾」(呉勝浩著/講談社)
本のタイトル通り、最初から最後まで爆弾でした。
酒屋で暴行事件を起こして連行されてきたスズキが、
爆弾の爆発を予言し、実際に爆発したことで、
話は動きはじめます。
爆弾は複数あるものと予想され、それがどこでいつ爆発するのかを、
取調室で、警察官がスズキから聞き出そうとします。
でもスズキの語ることは、とにかく長く、
どこに爆弾のヒントがあるのか難しい。
すごい犯人でした。
こんな厄介な犯人が実際にいたら、警察も困るよなと思いました。
実際、こんな奴はいないよと思えました。
取調室以外で動いている人物、等々力、矢吹、倖田、猿橋といった
警察官が面白い動きをしていて、リアリティがありました。
これがドラマや映画になるとしたら、
取調室のやり取りを再現するのが難しいだろうな。
脚本家泣かせ。
会話の取捨選択が難航すると思います。
でも映像で見てみたいです。
引用します。
台詞とは裏腹に、スズキはにこりと破顔する。
(187p)
おっと、2冊連続「破顔」が登場しました。
「破顔」は大笑いではなく、顔をほころばせること。
この本の使い方は正しいと思いました。
スズキの台詞
「そんなつもりはないです。ただ、良識っていいますと、昔は世界
中で、人殺しはべつに悪じゃなかったそうですね。ほら、ギリシア
でも中国でも南米大陸でも、いろんな民族だとか部族だとかがお互
い争っていたでしょう?だから敵を殺すのはむじろ正義で、悪だっ
たのは、仲間殺しだけだったんですってね」
「二十一世紀だって、戦場の英雄は祭り上げられる」
「ええ、たしかに。でも関係ない他人まで殺すのはよくないっての
は、意外と最近できた考え方らしいです。きっとそのほうが楽だか
らじゃないですかね。だってほら、仲間で区切ってしまったら、じ
ゃあ仲間って誰?って話になりますでしょ?家族は仲間っぽいです
けども、となりの町の郵便配達人は仲間と呼べるんですかね。名前
も顔も知らない離島のお医者さんはどうですかね。それこそ満員電
車の、たくさんいる乗客の、誰と誰が仲間で、誰がそうじゃないの
か、よくわからなくなってきます」
(270p)
敵なら殺しは正義。仲間なら殺しは悪。
時代背景が違えば、こういう考え方もあったのだろうか。
スズキの台詞
「刑事さんもそうでしょう?退屈で嘘にまみれた世の中に、愛想を
つかしているんでしょ?」
刑事の類家の台詞
「勝手に決めつけんなよ」乱暴に、類家は髪をかきまわした。「お
れはあんたほどすれちゃいない。期待に沿えなくて悪いけど、世の
中はまんざら捨てたもんじゃないと思ってる。たとえばオーセンテ
ィクの地球儀。あれを眺めたり撫でたりするのが暇なときの楽しみ
だ。たとえば銀河M87のブラックホール。世界初の撮影が何をもた
らすのかわくわくしてる。来年に発売されるVANSの新作がほし
い。連載漫画のつづきを読みたい。この仕事が片づいたらポークス
テーキ丼を食う。死ぬほど眠る。これも立派な欲望だ。それで充分
やっていける」
(294~295p)
連載漫画のつづきを読みたいが、共感できました。
人生って、こういうのを積み重ねている毎日なんだろうな。
425pの本。
2日間で読み切った。達成感。
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