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2021年7月30日 (金)

「慎治」を読みました

     

今日は令和3年7月30日。

   

この本を読みました。

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「慎治」(今野敏著/中公文庫)

  

同級生にいじめられ、殴られたり、万引きをさせられたりしていた

主人公中学2年の慎治。もう自殺するしかないと思いつめる。

ところが万引きしたところを、担任の古池に見られたことから、

数日間で事態は劇的に変化します。

  

この本は、テレビのニュースで、ある本屋の店員さんが

「勇気の大事さがわかる本」としてお薦めでした。

さっとメモして、図書館で予約した本です。

1997年に出版された本でした。

店員さん、ずっとこの本のこと忘れなかったんだなあと思いました。

   

引用します。

  

(古池)「おまえは、自殺を考えているなどと言う。冗談じゃないよ。

 俺のクラスから自殺者なんかが出たらよけいに面倒なことになる。俺、

 そういう面倒なことが嫌いなんだ。だから、おまえと話し合うことに

 した。問題の解決の第一歩は、おまえが小乃木たちのいじめははねの

 けることだが、どうもそれは簡単にはできないようだ」

(慎治)「できません」

 「あっさり言うなよ。それじゃ、俺が困るんだ」 

 「僕だって困ってるんですよ」

 「おまえが、小乃木を怖がってこのままじっとしていたら、おまえの

 犯行現場のビデオが売り出されちまう。そうなれば、おまえはもっと

 困ることになる」

 「どうすればいいんですか?」

 「だから、俺はおまえの目先を変える手伝いをすることにした」

 「目先を変える?」

 「いじめにあうと、その世界がすべてのような気分になる。もう逃げ

 場がないと感じるようになるんだ。それが大きな問題なんだ。だから、

 別の世界もある、いつかは、いじめから解放されるということを思い

 出させなければならない。それで、俺の世界を見せてやることにした」

 「すみません」

 「謝ることはない」

 古池は言った。「まあ、しょうがないよ。教師になっちまったんだか

 らな・・・・」

 (93~94p)

   

この中学教師が取った手段は勉強になります。

直接、いじめた側いじめられた側を指導するのではない方法。

なかなかこの手段はとれない。

  

でも似た発想は以前にも見聞きした覚えがあります。

テリー伊藤さんが、いじめにあっている人に、

「読書ができたらいいのに」と言っていました。

これも簡単に目先を変える手段だと思います。

  

古池の目先を変える方法は功を奏してきました。☟

 

慎治は、将太たちのことがそれほど気にならなくなってきた。自分

はまだ何かに夢中になれるのだということを知った。

そのことは彼にとって大きかった。

これから腕を磨けば、人に負けないモデラ―になれるだろう。いろ

いろなモデラ―と知り合いになる機会もあるかもしれない。

慎治の前に新しい世界が開けていた。学校の生活など、いくつかあ

る世界のひとつに過ぎない。

今までは学校の生活がすべてだと思い込んでいた。そのせいで自分

を追い詰めていたのだ。

モデリングの世界は、慎治にとって大切なものになりつつあった。

奥が深く、学ぶことがたくさんありそうだった。

将太たちの問題は、学校というひとつの社会での出来事でしかない。

慎治は、別の世界に足を踏み入れた。そのために、将太のことがこ

れまでに比べて相対的に小さな問題になりつつあったのだ。

つい二日前までは、真剣に死ぬことを考えていた。遺書を書こうと

していたのだ。

死にたいという気持ちは本当だった。だがそれは、将太に対するあ

てつけであり、自分の死によって相手を傷つけたいという気持ちだ

った。

そして、逃げたいのに逃げる方法がわからないことからくるやけっ

ぱちな気持ちだった。

今は違う。将太などのために死ぬのはばからしいという気持ちにな

っている。そして、死ななくても逃げることはできるということを

知ったのだ。

逃げることは悪いことじゃないと古池が言っていた。

言われたときはどういう意味かわからなかった。今はわかる。逃げ

ることも大切なのだ。

(207~208p) 

   

他の世界を知ることで、相対的に小さな問題になっていく

というのは、なるほどと思います。

この本は、ガンダムやサバイバルゲームのオタクの本であって、

読んでいてついて行けないところもありましたが、

言いたいことを本質はこの部分だと思いました。

   

  

ニュースでこの本のことを知ってよかったです。

あの店員さんのお薦めで、ここに一人「慎治」を

手に取って読んだ人がいるよと伝えたい。

でもどの本屋なのか全く不明。 

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