「歴史の愉しみ方」② 福島県に向かう新幹線の中で福島第一原発のことを読みました
今日は令和2年2月23日。
前記事に引き続き、
「歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ」
(磯田道史著/中公新書)より引用します。
昭和15(1940)年2月2日、兵庫県出石(いずし)出身
の衆議院議員議員斎藤隆夫は歴史に残る国会演説をした。政府
軍部のすすめる大陸政策はおかしい。そもそも中国全土を日本
は占領できない。泥沼化した日中戦争の目的もはっきりしない。
聖戦の美名に隠れて「国家百年の大計を誤るようなことがあり
ましたならば現在の政治家は死しても其の罪を滅ぼすことは出
来ない」。そう斎藤は叫んだ。本当のことだった。彼のいう通
りにしていれば日本の運命も変わっていただろう。5年後のみ
じめな日本の破滅を予見するような演説であった。しかし時の
国会は誤った。斎藤を国会から除名。賛成296、棄権144。
反対はわずか7。斎藤の演説も議事録から削除された。さらに
斎藤には脅迫がつづいた。自決用の短刀が送りつけられ、斎藤
は暗殺を覚悟した。せめて殺される前に自分の思いを記そうと
思ったらしい。色紙に漢詩をしたためた。私が見つけたのはそ
のなかの一枚であった。
吾が言は即(すなわ)ち是(こ)れ万人の声
褒貶毀誉(ほうへんきよ)は世評に委(まか)す
請う百年青史の上を看(み)る事を
正邪曲直おのずから分明
第七十五帝国議会去感 齋藤隆夫
読んで涙が出てきた。斎藤は「百年後の歴史の上」をみて国を
誤らぬよう命懸けで自説を述べたのだ。
(53~55p)
この話は、以前テレビ番組で再現ドラマをやっていました。
印象に残っていました。
調べた限りでは、録画はしていなかったようです。
でも文献に当たれてよかったです。
2011年3月11日に始まる東日本大震災。
福島第一原発の大事故。磯田さんは次のように書いています。
わたくしは怒りをおぼえる。電力会社の幹部や原発の権威者に、
ではない。平成の今になって、わたくしたちが目にしたのは、
「立派な現場・駄目な指揮・とんでもない兵站(へいたん)」
であり、「想定は外、情報は内」という、あいも変わらぬ、こ
の国の姿であった。「これこそが司馬(遼太郎)さんが生涯か
けて、筆の力で、日本人に更改をせまったものではなかったか。
昭和のあの戦争の失敗の時から、われわれは、なんにも変わっ
ちゃいないじゃないか」。(中略)
そもそも、今回の事態は、行きがかりの現状を自然に受け容れ
すぎる日本人の心性が「あだ」になった面がある。とくに、安
全基準の扱いがそうだった。原発でも建物でも新しい安全基準
ができると、それをクリアするまで稼働・使用しない、という
ことができない。それで新しい原発はさすがに高台に作ってあ
ったが、古い原発は5.7メートルという恐ろしい甘い想定の
ままで稼働を続けていて、破滅的事故に至ってしまった。日本
における安全の考え方は「これまでの物は仕方がない。これか
ら作る物は安全に」というものであった。優しい自然に育まれ
た日本人には環境への甘えがあって、最悪の事態は考えないこ
とにしがちである。
日本人は、現状を追認するものではなく改善すべきものだ、と
肝に銘じねばなるまい。
(65~66p)
私は先日福島県に行ってきました。
原発のある大熊町にも行ってきました。
この文章は、行きの新幹線の中で読みました。
大熊町をしっかり見てこようと思わせたものでした。
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