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2017年1月29日 (日)

ハッブルのこと その6/太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなった

  

今日は1月29日。

  

前投稿に引き続いて

昨年11月24日放映「コズミックフロント NEXT 宇宙の革命児!

エドウィン・ハッブル」より。

  

この番組は、今現在youtubeで見ることができます。

私の文章を読んでも、イメージが浮かばない方は、

ぜひこの映像を見てください。


YouTube: 〔コズミックフロントNEXT〕天文学の革命児! エドウィン・ハッブル〔Cosmic Front Next〕

  

今晩書くのは、上の映像だと24分25秒付近からの内容です。

  

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ナレーター:ワシントンにあるスミソニアン博物館。

  1920年、ここで、渦巻き星雲の正体にいどむ

  大論争が行なわれました。  

  「グレートディベート」です。

  壇上に立ったのは、ウィルソン山天文台のハーロウ・シャプレー。

  そしてリック天文台のヒーバー・カーティスです。

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  シャプレーは、渦巻きを生まれたての星と、

  それを取り巻くチリやガスの集まりと考えました。

  ちょうど太陽系が誕生する時の状態です。

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  そしてそれらは全て「天の川銀河」の中にあると主張したのです。

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  一方、カーティスは、これに真っ向から反対します。

  渦巻きは「天の川銀河」と同じような大量の星の集まりだと

  考えました。

    そして「天の川銀河」の外側の、ずっと遠くにあるものだと、

  主張したのです。

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  このカーティスの説に、ハッブルも所属するウィルソン山天文台の

  研究者たちは、猛反発します。

  根拠としたのが、メンバーの一人、ヴァン・マーネンのデータです。

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  マーネンは、観測データから、渦巻きが回転していると主張します。

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渦巻き星雲の渦巻きが回転していることが、

どうしてカーティスの説に反発する根拠になったのか?

そのところについては後日の投稿で。

  

この「グレートディベート」について、

膨張宇宙の発見~ハッブルの影に消えた天文学者たち~

(マーシャ・バトゥーシャク著/地人書館)では

次のように書いてありました。

なお、本の中で「グレートディベート」は「大論争」と訳されています。

  

1920年の最も記憶に残る天文学史上の出来事は、

ワシントンDCで、ハーロー・シャプレーと

ヒーバー・カーティスが会い、

国立科学アカデミー会員の前で宇宙の構成について

議論したことだった。(中略)

この時代を画す対決は一般には「大論争」として知られているが、

実際のところ、それは適切な表現ではない。

2つの講演が続けて行われただけと言った方がよく、

この出来事は科学を対象とする出版物にさえ

取り上げられることはなかった。

天文学界では、この4月の会合にまつわる由緒ある伝説

ーその記憶は、”宇宙の巨人たち”が激しく衝突したというもので、

言ってみれば、『真昼の決闘』の天文版であるー

が、時を経て少しずつ発展し、過度に潤色されたため、

最後は対立する2つの陣営が最高の殿堂で

科学知識を戦わせて相まみえた「ホメロスの戦い」と

表現されるようになったのである。  (238p)

  

「グレートディベート(大論争)」と聞くと、

熱い討論がなされたように思えますが、

その会合の様子が書いてあるところを読むと、

「静か」なイメージがあります。

後に潤色されたイメージなのです。

  

ハッブルと同じウィルソン山天文台に勤めていたシャプレー。

(シャプレー在勤時期は1914年~1921年、

ハッブルは1919年から亡くなる1953年まで) 

シャプレーの功績は、私たちが住む太陽系が、

「天の川銀河」の中心ではなくて、

中心からは外れた場所にあることを証明したことです。

  

そのことを書いた文章を引用します。

  

彼(シャプレー)がやりとげたことは、

コペルニクスの法則にまで及ぶほどだった。

16世紀に、コペルニクスが地球を太陽系の中心から

動かしたのとちょうど同じように、シャプレーも太陽系の位置を

銀河系の心臓部から動かしたのだ。

「太陽系は中心から外れ、人類もまた結果的にそうなったが、

これは人類がそれほど大きな存在ではないことを

意味するのだから、どちらかと言えば良い考え方だ。」

(210p)

  

いいことを言うなあと思いました。

人間は自分を中心に考えがちで、

それが地動説・天動説論争になりました。

そして人類は、今度は銀河系の中心から外されたのです。

今は当たり前のことですが、当時の人たち、

それもたった100年あまり前の人たちにとっては

大きな衝撃だったようです。

  

そのような功績を残したシャプレーですが、

この「グレートディベート」での内容は、

後に間違っていたことを認めています。

間違った理由の一つが、同僚のマーネンの

渦巻きは回転しているという主張なのです。

そのことについてはすぐにでも書きたいけど、

後日にします。

「ハッブルのこと」シリーズは小休止。

コメント

ハッブルの話、関心をもって観ました。ハッブルは知っていましたが、このいきさつは初めて知りました。
30代に同級生に誘われて、ハレー彗星の観測で天文台に行ったり、高い山での彗星観測にいたりしました。おかげで一般の人より、天文に詳しくなりました。
最近天体観測とはご無沙汰していますが、映像を観て、
網状星雲だとか、女性が取り出したハッブルの観測記録のカード
の隅に「M31」とあるので、これはアンドロメダ銀河だ、などと興奮しました。
昔の記憶がよみがえったようです。
アンドロメダ銀河はカシオペア座のWの左のVと
ペガサスの四辺形(秋の星座)の角との間にあるので、
肉眼でもぼんやりと確認できます。双眼鏡なら渦がわかります。
M42(オリオン座の三つ星の下にある)もとても有名です。
久しぶりに、星について思い出しました。ありがとうございました。

クラリンさん、コメントをありがとうございます。
アンドロメダ銀河は一度確認したいです。
ただ現在、インフルエンザと闘っている最中。
しばらくはできません。

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